何かいい香りがするなあと辺りを見まわしたら

庭先の沈丁花がポツポツと咲いていた

 

蕾が沢山付いているのは知っていたが

咲くのはまだ先だろうと思っていた

 

寒いのか暖かいのかよく分からないうちに

もう二月も終わりだというのか

 

かたや反対側の庭先で

溢れんばかりに咲き続けて楽しませてくれた珍種の椿は

性もこんも尽き果てて無残な形状を晒していた

 

決して大きな木でもないのに一つ一つの細い枝に

釣り合いも取れない大きなピンクの花弁が

それこそ鈴なりに次々と咲いては散っていくのだ

 

沈丁花の典雅な香りに酔いつつも

椿がこれまで渾身の力で精一杯微笑み語りかけてくれたことに対して

感謝の気持ちを伝える事が出来ただろうかと慙愧の念がよぎる

 

大した肥料も与える事が出来てないのに

何故そんなに献身的とも言えるほどに祝福してくれたのか

 

それはまさに感動そのものだった

 

何故かは分からないが、ありがとう

どう応えたらいいのかわからないけど、本当にありがとう

 

そしてこの沈丁花、君もまた、生死の境を乗り越え

数々の変転を経て、長く苦労してきた

 

よくここまで大きくなった

 

花も可憐でかわいい、香りも素晴らしい

ありがとう、本当にありがとうね