いつも眼にしていたはずの風景が深い朝霧の中で
どんどん見知らぬ世界に変容していった
霧の中から神様でも現れるのだろうか
何が起きても驚かない
この世は未だすべてが謎だ
霧の奥に青空が広がっているのかどうかも分からない
たぶんそうなのだが、それが未だ定かでないのがいい
霧に自分の人生のアラを隠されてほっとしたのか
リセットとも解釈できる天の采配に希望を見たのか
自分の人生の気に入っているワンシーンも見えてきた
ロマン・・そうだ
かつて自分のロマンを掻き立てられたワンシーン・・
サンフランシスコ、サンタモニカ、ロサンゼルス
グアム、台北、ソウル・・
北海道や沖縄にも何度も行った
いつからかカニのように海底の泥の中を這いずり回る
現実が海底の泥ならロマンは白い雲であり水平線か
長く南太平洋の白い砂浜と青い海原を夢見ていた
そしていつか
そんなことも思わなくなった
こうして朝霧に包まれてふとよみがえる感覚
失われた時を遡ればそこに行き着くのか
そこには今でも忘れてしまった高揚があるのか
目の前には照りつける太陽と青い南太平洋の海原
足元にはどこまでも続く美しい砂浜のそこには