先日、特殊端境面白前衛レコードショップSHE Ye, Yeのホームページを覗いていたら、Ensemble 0の『Elpmas (Moondog) Revisité / Revisited』というアルバムが紹介されていた。

 

【2018年:Murailles Music / Ici D'Ailleurs / Super Loto Editions】Elpmas (Moondog) Revisité / Revisited

 

↓SHE Ye, Yeによる『Elpmas (Moondog) Revisité / Revisited』の紹介はこちら。

Ensemble 0 : Elpmas (Moondog) Revisite/Revisited - sheyeye records

 

内容には"マリンバなどの自演の演奏を一音一音サンプリングしコンピューター上で再構築するという、それまでの作品とは全く異なる手法で制作された"と書かれていて、それが私の音楽耳のアンテナに引っ掛かった。タイトルに書かれている"Elpmas"は"Sample"を逆から読んだ言葉遊びで、Moondogとサンプラーが結びつかなかった事も興味を引かれた理由の一つだ。

 

元のアルバムは1991年にドイツのKopfからリリースされたMoondogの『Elpmas』で、このアルバムもSHE Ye, Yeは紹介しており、やはりその内容に興味を引かれたため、中国は上海に住んでいる私は早速MP3アルバムをダウンロードして聴いてみる事にした。

 

Moondog

 

【1991年:Kopf】Elpmas

 

【収録曲】

 

01. Wind River Powwow

02. Westward Ho!

03. Suite Equestria (Trail Versus Road And Trail)

04. Marimba Mondo 1 • The Rain Forest

05. Fujiyama 1 (Instr.)

06. Marimba Mondo 2 • Seascape Of The Whales

07. Fujiyama 2 (Lovesong)

08. Bird Of Paradise

09. The Message (A Cappella Male Chorus)

10. Introduction And Overtone Continuum

11. Cosmic Meditation

 

【クレジット】

 

Moondog (Louis Thomas Hardin): composed by, written by, keyboards, percussion, voice, producer

Andi Toma: guitar, voice, soloist, whistling, engineered by, mixed by, producer

Götz Alsmann: banjo

Ulf Horbelt: mastered by, edited by

Henry Schuman: oboe

Johannes Leis: piccolo flute, alto saxophone, tenor saxophone, bass saxophone

Dirk Rudolph: sleeve, design

Peter Wendland: violone, viol (viola da gamba (diskant, tenor, bass))

Akbar Huck: voice

Max Alsmann: voice

Nobuko Sugai: voice

 

↓SHE Ye, Yeによる『Elpmas』の紹介はこちら。

Moondog : Elpmas - sheyeye records

 

Louis Thomas Hardin=Moondogと一緒にプロデュースしたのはMouse On MarsのAndi Tomaだ。

 

早速『Elpmas』を聴いた感想を書く前に、以前聴いていたMoondogのアルバムについて書くと、私は以下の4枚のアルバムを聴いていた。

 

【1956年:Prestige】Moondog

 

【Moondog:Columbia Masterworks】Moondog

 

この2枚はアメリカのフリー・ジャズばかり聴いていた若い頃にレコードで聴いたのだが、正直なところ、当時は良さがわからなかった。まだ、イギリス等のヨーロッパのフリー・ミュージックの良さもわかっていなかったからなぁ。

 

【1953年:Mars】On The Streets Of New York

 

【1953年:Epic】Moondog And His Friends

 

私がMoondogに興味を持ったのは、上海に来てからだ。Moondogを見出した録音技師のTony SchwartzのFolkways Recordsからリリースされたアルバムを好きになり、1957年リリースの『Music In The Streets』に収録されているMoondogの演奏を聴いて興味を持ったのだ。

 

Tony Schwartz (ナンデスカマンじゃないよ)

 

【1957年:Folkways Records】Music In The Streets

 

その後、その他のMoondogのアルバムを聴く事は無かった所に『Elpmas』が来た訳だ。聴いてみようと思った理由は上述の理由の他に、晩年のMoondogの音楽も聴いてみようとも思ったのだ。

 

前置きが長くなったが、最初に『Elpmas』を聴いた時に思ったのは、これはデンマークのAnders Lauge MeldgaardやCopenhagen Clarinet Choirが好きな人(つまり私のような人)なら、絶対好きになるという事だった。これらのミュージシャンの音楽と一緒に聴いても全く違和感が無いように感じられた。

 

先ず、サンプラーを使ったプログラミングされた音楽のようには聴こえない。とても自然な演奏のように聴こえる。

 

1曲目「Wind River Powwow」にはマリンバとヴィヴラフォン(かな?)、パーカッションとベースの音が使われているが、何か素朴で優しくほのぼのとした音楽だ。

 

2曲目「Westward Ho!」は弦楽器と管楽器、パーカッションでゆったりと始まり、子供の声、水の音、船を漕ぐような音(?)が入って来て、男性の歌が入って来る曲だが、ここで演奏される音楽の何と優しく美しい事か。後半ではバンジョー?ギター?や雑踏の音(?)、牛の鳴き声や口笛が入って来る。

 

3曲目「Suite Equestria (Trail Versus Road And Trail)」はパーカッションとマリンバとヴィブラフォンで始まるのだが、このメロディーが何だか芸能山城組の最高傑作『交響組曲アキラ』の「金田」のジェゴグの音とメロディーを想わせる。そして、その後に管楽器と男性の合唱が入って来るのだが、これがまたJohn Lurie率いるThe Loundge Lizardsの最高傑作『Voice Of Chunk』の「Tarantella」のバンド・メンバーによる合唱を想わせるというちょっと面白い曲だ。

 

4曲目「Marimba Mondo 1 • The Rain Forest」はマリンバとベースの音で静かに始まるのだが、マリンバは上手く重ならないように音が配置されている感じだ。途中からジャングルの鳥の声等のジャングル・サウンドが入って来る。

 

5曲目「Fujiyama 1 (Instr.)」は管楽器で「Fujiyama」のメロディーが奏でられる。この"Fujiyama"を漢字で書くと"富士山"なのかジャケットに書かれている"不尽山"なのか。管楽器の後ろでベースが静かにリズムを刻んでいる。

 

6曲目「Marimba Mondo 2 • Seascape Of The Whales」もマリンバとベースの音で静かに始まる。途中から入って来る鳴き声は鯨の鳴き声だろうか。ここでのマリンバのメロディーも「」のジェゴグのメロディーを想わせる。

 

7曲目「Fujiyama 2 (Lovesong)」はNobuko Sugaiがジャケットに書かれているMoondogの詩を朗読しているのだが、彼女の声と朗読の仕方の所為か、最初に聴いた時はちょっと怖い感じがした。バックのサウンドは弦楽器で、詩の朗読が終わると合唱とバンジョー?ギター?で「Fujiyama」のメロディーが演奏される。これは怖くないよ。最後に雨と雷の音が入って来る。

 

ちなみにジャケットの詩の内容は以下の通りだ。

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不尽の山

 

不尽の山よ、私を連れ去っておくれ

あの人が死んでしまったから、この人生はもうおしまい

不尽の山よ

 

何処にあの人が佇み身を投げたのか教えておくれ

そこに私も佇み、喜んで身を投げよう

不尽の山よ

 

もしこの湖で私が死んだとあの人が聞いたなら

一緒にいた事など忘れ去ってしまうだろう

不尽の山よ

 

この人生をこうして捧げてしまうまで

あの人を知らないままに生きてきた

不尽の山よ

 

不尽の山よ、私が死んでしまったら

この世界に伝えておくれ、愛は命より貴いと

不尽の山よ

 

ルイス・ハーディン

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8曲目「Bird Of Paradise」は管楽器が牧歌的でクラシカルなメロディーを演奏する。ピッコロ・フルートが鳥の声の鳴き真似のような演奏をする。

 

9曲目「The Message (A Cappella Male Chorus)」は男性の輪唱のみの曲だ。

 

10曲目「Introduction And Overtone Continuum」と11曲目「Cosmic Meditation」はパイプ・オルガンっぽい音でアンビエント・ミュージックっぽく演奏して、このアルバムは静かに終わる。

 

何回か聴いて思ったのは、このアルバムの音楽はMoondog=Louis Thomas Hardinの人柄そのものなのではないか?という事だった。そう言えば、このアルバムの音楽のメロディーはちょっとMoondogが生涯関心を持っていた北欧神話やバイキングを想わせる所が有ると思うのは私だけかな?

 

『Elpmas』があまりにも素晴らし過ぎたので、これからもうちょっと晩年のMoondogのアルバムを聴いていこうと思っている。Moondogのアルバムは初期のアルバムが有名だと思うが、初めて聴く人は『Elpmas』から聴いた方が良いと思う。理由は『Elpmas』は時代を越えた普遍的に素晴らしいアルバムだと思うからだ。流石にジャンルを越えて、とまでは書かないが、ジャズやクラシック、モンド・ミュージックやアンビエント・ミュージックが好きな人以外にも聴いて欲しいと思うな。晴れの日でも雨の日でも休日の日中にお茶でも飲みながら聴いたら、穏やかな気持ちになれると思うよ。

 

最後に…You TubeにEnsemble 0による『Elpmas』の演奏動画が少しだけ有ったので貼っておく。これを観て興味を持った人は、是非アルバムを聴いてみて貰いたいな。