過日、久しぶり(?)に近所の古本屋へと寄り道をして、ブロ友さんが紹介していた本の著者である角幡唯介氏「探検家の憂鬱」の文庫本を見つけたので即買いしたそのついでに日野草城。その他「清岡卓行詩集(限定1000部)」「伝書 しむらのいろ 志村ふくみ」などを入手する。

目の前で古いレコードを何枚かかざし気味に持ちながらレジにいる店主に売値をたしかめ、千円札を何枚か渡して礼をいうお客さんを見送ったあとにどんな品物だったのかと小声で質すと、近頃物故したヴォーカルのいたロックバンドの名を告げた。

そのあと古本店主はほかのお客さんが全員店内から退店したのを見届け、内側から鍵をかけ、店を閉めて二人してバックヤードで珈琲を飲みながらのしばしの歓談となる。

その日の市場での話、店主彼自身の売り買いの顛末などを教えてくれた。売りも売ったり、買いも買ったりというこのあたりはまったくもってこの私と似たり寄ったりのキャラクターである。

その際に彼が仕入れたという音楽関係を一括した中に在ったという店主が個人的に以前から欲しかったのだという「レコードは風景をだいなしにする」という本の話を少ししたあとに、講談社文芸文庫の品切本についてのあれこれ、そして話はぐっと飛んでこれからの彼の店のことなどの話をして珈琲をご馳走になった礼を言って店を退出し、再び開店となった古本屋に背を向けた。










その日に買ってきた本の中から。
























  生命


 ある夜、星を見ていた。


その時、漆黒の夜空に光を穿ち、瑞々しく瞬く星が、私の魂に直結していることを感じた。

私たちは、光を宿す宇宙の星屑である。

その小さな一片一片が、地上に降り、人間や草や花、小鳥や虫たち、石などすべての生類としての生命を与えられ、それぞれ、愛しい生命をはぐくんでゆくのである。

しかし、人間のみは自己と他という区別を知り、一ではなく、ニ(自他)という罪を負ったために、現世において、苦しみ、悩み、また喜びや楽しみを共に味わうこととなった。

生者必滅のことわりを知ったのである。



























伝書 志村の色 
志村ふくみ
求龍堂
2013年3月21日発行








染織作家・随筆家である志村ふくみによる色について、それから染織をこころざす人たちへと書かれた本。



















































  空


わが罪は青 

その翼空にかなしむ







































  刀



刀を見たり


蒼く深き怒りを見たり


われとわが身を投げむ海のごとく


そが底ひなき誘ひ


わが胸にしばし騒めき


そが鋭き切先に


風絶ゆる遠き空より


凍れる虹のごときもの


さと きらめき落ちぬ


刀はよきかな


刀見て腹切らむと思へり

























清岡卓行詩集
思潮社
1969年11月25日 限定1000部発行







アルチュール・ランボーの翻訳家、小説「アカシアの大連」での芥川賞受賞作家、そしてベースボールに詳しい詩人として知られる清岡卓行の限定1000部、思潮社発行の詩集。















音源お借りしました)