yours ーユアーズー
片岡義男
角川文庫
平成3年3月10日 初版発行
(音源お借りしました)
片岡義男氏は1939年生まれ。日系二世の祖父を持ち、東京世田谷に育つ。大学在学中に小説を書いてデビュー。
昭和平成の人が書店に訪れた際にはこの作者、片岡義男氏の名前はおそらく新旧いづれかの書店の棚で目にしていることであろう。
「ぼくはプレスリーが好き」「スローなブギにしてくれ」「吹いていく風のバラッド」など、印象に残るタイトルの小説を書いている。
そんな片岡義男氏だが、彼の評価というものがどうやら定まらないらしい。
それはある意味で当然のことなのだろう。なぜなら彼ほど世間の評価とは一切関係のないところで、ただ書きたいことだけを書いているという人はいないだろうから。
現在でも現役作家としての人気を誇っているであろう片岡義男氏だが、実は古本の世界でもいまだ人気は衰えることなく、独自の着実な歩みをみせている。
本書はその片岡義男氏の手から生まれた六十編の詩、こころのなかの影の断片が収められている。
『昨年の冬のある日、ふと思いついた僕は、駅の売店にならんでいる女性雑誌のすべてを買い求め、腕に抱えて部屋へ持って帰った。一冊ずつページをくっていき、言葉を拾い、それを僕はノートブックに書きとめた。……………山頭火の句集が文庫本でたまたま手元にあった。収録してある句をすべて読み、気に入ったものを書きとめた。四つか五つのその句を、普通の散文で言い換えながらひとつにつなげていったら、やがて詩のようなものが出来た。それもこの本のなかにある。』(あとがきにかえて より)
山頭火と片岡義男、この組み合わせにうなってしまった。
山頭火の文庫本とはあの春陽堂版のことか…
片岡義男氏といえば、やはり小説家として有名なのだが、実は彼の書くエッセイというものがとてもよくて、ぼくは彼の全エッセイ・コレクションという一冊本を愛読している。