昨年は古書を購める機会が例年よりもいくばくかは減ったのだが、そのような中でも昭和二年刊行の『芥川龍之介集』を手中に納められたことは嬉しい出来事であった。

七百頁を越える大冊であるにもかかわらず、片手に持ってもとても軽く感じられる一冊となっている。このような造本に適した紙質のものが用いられているのであろう。
我が手中に到来した一冊は発行年からすると保存状態の良好だったもののようで、甚だありがたい次第である。

尚、この昭和二年の七月二十四日、芥川は田端の自宅に於いて自死したため、芥川本人は本書を目にすることはなかった。そう思うとなかなか感慨深い一冊である。
















発句の頁より











竹林や夜寒のみちの右ひだり


霜どけの葉を垂らしたり大八つ手


木枯らしや目刺にのこる海のいろ


臘梅や枝まばらなる時雨ぞら


お降りや竹深ぶかと町のそら












   一游亭來る

草の家の柱半ばに春日かな


白桃や莟(つぼみ)うるめる枝の反り


薄曇る水動かずよ芹の中


炎天にあがりて消えぬ箕のほこり


初秋の蝗つかめば柔かき













芥川龍之介集

昭和二年九月十二日 発行

新潮社









前年から漠然と思っていたのだが、辰年だからというわけではなく、今年は下の写真の芥川龍之介俳句集『我鬼全句』に親しみつつ、その中から芥川龍之介の俳句を拙ブログにてご紹介をしていきたく思っています。

















芥川龍之介句集
我鬼全句
芥川龍之介
昭和五十一年三月十五日 発行
永田書房
装幀 永田龍太郎