2 | 浴室

「夜の蝶」
そうやってよく揶揄されるこの職業は、やはりその言葉があっているような気がする。

儚いし、脆いし、永遠に飛び続けてはいられない。

さなぎの期間、それはお客様との連絡のやり取りであったり、所謂自分磨きであったり。

毎日脱皮を繰り返しては、上手く飛べるように日々を重ねる。
醜い姿から綺麗な蝶になる為の努力をして、種を巻いては花を咲かせる為の努力もして、ほんの少し、ほんの少しの甘い蜜を吸うために、生きている。
ね、ぴったり。

煌びやかな姿には醜さが必ず隠れているから取り繕う。
笑顔も言葉遣も、振舞いも、全部その為でしょう。


でもこんな世界、わたしは嫌いじゃない。
縦社会も体育会系も厳しく煩いマナーも嫌いじゃない。

「魅せるわたし」
は、どこに行っても使えるもの。
使いすぎは、ある意味別として。


後は、人間観察が興味深い。
夜の社交場で毎日繰り広げられる、ドラマのキャストの1人であるはずのわたしは、いつもそのドラマをどこか遠くから眺めている――そんな気がしている。






―――零れ落ちたわたしを、大事に元に戻しても、昔の形には戻らない。

接着剤はあの頃のわたし。

それでもわたしは、あの頃のわたしを、大切に鍵をかけて閉じ込めようとする。

わたしが守りたい、あの頃のわたしには、何があるのだろうか。