Sとしての悩み | 浴室

Sとしての悩み

わたしは彼に触られて、舐められて、嫌だとは感じない


寧ろ、気持ちが良くて、イくこともある


でも心のどこかで、頭のどこかでそれを嫌うわたしがいる、嫌う、というより抵抗



人から~される


ということが嫌いなわたしは受動態であることを酷く憎む


彼に快感を与えているわたし、彼を見下ろしているわたし、ごめんなさいと何度も呟く彼


満足そうに見つめてわたしは彼の髪を掴む、そして命令する



『イくところ、ちゃんと見ててあげるから、目を瞑っちゃだめだよ』



片手で口を塞いだまま、顔を真っ赤にした彼は泣きそうな顔で頷く


わたしは彼が泣く顔が好きだ




なぜわたしが人から~されるということが嫌いなのかと考えてみても


それはわたしの中でのある種のイメージのせいだと考える


女であることを酷く憎み、女であることを酷く利用するわたしは


~される=女性的


という不思議な概念があり、そこから彼から与えられる快楽に何か一枚の壁を作ってしまうのだと思う


Mになれないのもそう、社会的なイメージとして


女性的=M


男性的=S


というイメージがあってわたしはそれに支配されているのだと思う


いくら社会を憎んでみても、社会に一番影響されているのはわたし


Sになりたいのも、Sをしたいのも男性になりたいのだからだと思う


軽蔑と憧れ、相反する矛盾、アウフヘーベンまでまだ遠い




もっと突き詰めてみれば挿入という行為


わたしは彼と挿入という行為をしたことがない、所謂わたしは彼に抱かれたことがない


最も女として意識する瞬間であるし、それを受け入れられないわたしだからだと思う


でもなぜ受け入れられないのかというとわたしが過去に強姦されたからであり


わたしは強姦されたという事実にまだ、支配されていると思う


解放されたいと思う反面、解放されてしまったらわたしはもう愛人なんてできないという気持ち


そしてご主人様もできるかどうかが疑わしい



どう、あがらってみたとしてもわたしは女で彼は男



彼に抱かれる日が来るとするのならばわたしの中でわたしが女であるということを受け入れられたとき


しかしそれにいたるまではまず彼に対する壁を取り払わなければいけない


一生懸命わたしを気持ちよくしようとする彼を、わたしが素直に受け入れられなければいけない


彼が一生懸命なときに違うことを考えている、例えばお客様のこととか



これだけが理由ではないと思う、わたしが今まで経験してきたことの全てが今のわたしを作る


失恋という大きなトラウマ、恐怖感



でも一つだけ言いたいことはわたしは元々Mだということだ