目を閉じた | 浴室

目を閉じた

好きな男を思い浮かべて。


委ねるわたしの体を這う手。


苦痛でしかないのに快感に塗れたような情けない顔をして、わたしは口を緩やかに開いて、やがて息を漏らす。



鏡に映る自分の姿。


目も当てられないほど、醜い。




『可愛いよ、愛らしいよ、綺麗な肌だね』




満足気に言う男の声をどこかうつろげに聞いていた気がした。


















シャワーに入る時にいつも自分に言い聞かせる。



これはわたしじゃなくて、花魁で、わたしじゃない。


こんなこと、いつもやってきたことじゃない、今更、何を嫌だというの。



花魁はいわばわたしの苦痛を引き受ける役目の女。


その名の通りに。





わたしは誰のものでもなくて、わたしのもの。


わたしの体をわたしがどう使おうと、誰にも文句は言わせない。


目的手段。



これは仕事、仕事。仕事。













ベットの上に寝転ぶわたし。崩れあった体が重なって、喘いだふりをしながら自分の口に指を入れて噛んだ。


















テレビの中の女優が、同じ顔をしている。