Easy money
ずるをすれば誰でも有利になるというのが勝負事である。
市場原理などというのは教科書の上では議論されるが実務・現実では教科書の理論は通用しない。
昔、入札商売でこんなことがあった。入札はフェアな競争手法として至るところで多用されるが時として実務の不備をついてずるが起こる。
バングラデシュの入札では事前審査をパスした登録業者が札入れをするのがその登録自体は殆ど形式的なものでよほどのことがなければ望めば誰でも登録業者になることができる。
入札は定刻までに受け付けるが札の入れ方は封印した書類の手渡しかテレックスでのみ受け付けていた。メールなどはない時代だったから通信手段はテレックスしかなかった。
私の会社はお行儀がよかったのでいつも札いれするときは事前に書類準備して値段の所だけは空欄にしておいて直前に手書きで書き入れる。当日の市場価格でなんとも判断できぬからなので当然である。定刻ぎりぎりに各社の代理店がそれぞれの書類を持って国営石油会社の事務所に持参するわけだ。全員の面前で主催者が札を開いて値段を読み上げる。当たりくじの発表会なのでなかなか緊張感があってよい。
ある時の入札で石油トレーダーが一番札を取って落札した。自信もって望んだ私は落選通知にがっかりしたのだが翌日揉めているという話になった。というのは一番札の札いれに疑義があり紛糾しているというのだ。
そのトレーダーが何をしたかというと、定刻1-2分前にテレックスでの札いれを宣言し書類を打電し始めた。なにせ昔のテレックスなのでアルファベット大文字しか打てない、速度が遅い、書類は褌のように長文なので全文流れるのに優に10分程はかかる。
最初の文言が流れ始めたのが定刻1分前だからぎりぎりセーフ。だがそのテレックスが途中で断線したというのだ。これはわざと断線させて値段の手前でテレックスを止めたのだ。現地の事務所に集う代理店というのは結構胡散臭い連中が多く互いは顔見知りだ。ここでとレーダーがやったのは自分の代理店に金つかませて集合した競合の同輩から値段を盗み見たのであった。ぎりぎりのタイミングで一番札の値段を知ったトレーダーは少しだけ上乗せした値段をタイプしてから、おもむろに中断したテレックスをまた流し始めた。
当然一番札だったが最後の文章まで流れきったのは優に定刻を過ぎていた、ということである。
この札について違法か正当か議論が巻き起こったのである。
書類には札は10:00までにxxの事務所に届けること、とだけ記載がある。従い一番札が有効か無効かの議論になったのだ。結局再入札になったような記憶があるがアナログを活用したなかなかの策士だった。
つまり学生の教科書には設問の前提条件に「ここに完全なさいころがあるとします。。。」と書いてあるのだが実践いや実戦では完全なるさいころなどまずないのである。都会の商売ならともかく田舎へ行けば行くほど完全なサイコロはなくなる。サイコロを見たらこれはいかさまに違いない、と思うようなったのはこの入札事件からだ。
ずるをすれば誰でも有利になるというのが勝負事である。
市場原理などというのは教科書の上では議論されるが実務・現実では教科書の理論は通用しない。
昔、入札商売でこんなことがあった。入札はフェアな競争手法として至るところで多用されるが時として実務の不備をついてずるが起こる。
バングラデシュの入札では事前審査をパスした登録業者が札入れをするのがその登録自体は殆ど形式的なものでよほどのことがなければ望めば誰でも登録業者になることができる。
入札は定刻までに受け付けるが札の入れ方は封印した書類の手渡しかテレックスでのみ受け付けていた。メールなどはない時代だったから通信手段はテレックスしかなかった。
私の会社はお行儀がよかったのでいつも札いれするときは事前に書類準備して値段の所だけは空欄にしておいて直前に手書きで書き入れる。当日の市場価格でなんとも判断できぬからなので当然である。定刻ぎりぎりに各社の代理店がそれぞれの書類を持って国営石油会社の事務所に持参するわけだ。全員の面前で主催者が札を開いて値段を読み上げる。当たりくじの発表会なのでなかなか緊張感があってよい。
ある時の入札で石油トレーダーが一番札を取って落札した。自信もって望んだ私は落選通知にがっかりしたのだが翌日揉めているという話になった。というのは一番札の札いれに疑義があり紛糾しているというのだ。
そのトレーダーが何をしたかというと、定刻1-2分前にテレックスでの札いれを宣言し書類を打電し始めた。なにせ昔のテレックスなのでアルファベット大文字しか打てない、速度が遅い、書類は褌のように長文なので全文流れるのに優に10分程はかかる。
最初の文言が流れ始めたのが定刻1分前だからぎりぎりセーフ。だがそのテレックスが途中で断線したというのだ。これはわざと断線させて値段の手前でテレックスを止めたのだ。現地の事務所に集う代理店というのは結構胡散臭い連中が多く互いは顔見知りだ。ここでとレーダーがやったのは自分の代理店に金つかませて集合した競合の同輩から値段を盗み見たのであった。ぎりぎりのタイミングで一番札の値段を知ったトレーダーは少しだけ上乗せした値段をタイプしてから、おもむろに中断したテレックスをまた流し始めた。
当然一番札だったが最後の文章まで流れきったのは優に定刻を過ぎていた、ということである。
この札について違法か正当か議論が巻き起こったのである。
書類には札は10:00までにxxの事務所に届けること、とだけ記載がある。従い一番札が有効か無効かの議論になったのだ。結局再入札になったような記憶があるがアナログを活用したなかなかの策士だった。
つまり学生の教科書には設問の前提条件に「ここに完全なさいころがあるとします。。。」と書いてあるのだが実践いや実戦では完全なるさいころなどまずないのである。都会の商売ならともかく田舎へ行けば行くほど完全なサイコロはなくなる。サイコロを見たらこれはいかさまに違いない、と思うようなったのはこの入札事件からだ。