間が開いたから少しリハビリに導入部。
ストーリーは本来、妖夢からの依頼で憑きたてホヤホヤの橙を張り倒すのが始まりだけど、うろ覚えだし、異聞だから別のシナリオ。

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Stage Ex 満たされぬ和の心~導入~

後に春雪異変と呼ばれる、西行寺幽々子によって引き起こされた異変は、紅魔館のメイド、十六夜咲夜の手によって解決された。
そして幻想郷には春が戻り、長く続いていた冬は終わりを迎えた。
春気立つには遅すぎたが、幻想郷の住人にそんなことを気にする人妖は存在しない。
そんな春雪異変から数日が経ったある日の博麗神社にてお話は始まる。

「いやー、今回は完全に任せちゃって悪かったわね。」

お茶を啜りながら巫女装束に身を包んだ少女、幻想郷の守護者、博麗霊夢がケラケラと言う。

「全くよ。解決できたからいいものの、あの亡霊姫が本気を出してたら私も冥界の住人になっていたかもしれないのよ?」

メイド服の少女、異変の解決者、十六夜咲夜は呆れ口調で言い返す。
今日咲夜が博麗神社を訪れた理由として、異変解決の事後報告と、高熱で倒れていた霊夢への愚痴が主である。
幻想郷の守護者たる霊夢が高熱を出し、異変解決に望めなかったことは非常に稀有なことであり、あってはならないことである。

「まあまあ、解決出来たんだからいいじゃない。それに、咲夜が居なかったら幻想郷は滅びていたかもしれない。
今回は私の不摂生のせいで幻想郷を危機に陥れてしまったけど、咲夜がいてくれて助かったわ。」

本来、妖怪退治を生業としている霊夢が異変の解決をすることで全てを調和している。
その守護者たる彼女が動けなくなることは在ってはならないことであり、ひいては幻想郷のパワーバランスの崩壊を引き起こす要因となるのである。
今回は咲夜が解決した為に大事になることもなく終わりを迎えたが、次が上手くいくとも限らない。

「まあ、滅びてしまったらそれは竜神様のお導きね。
とはいえ、私とてやすやすとこの世界を壊させはしないわ。」
「そう……なら、とっとと完治させなさい。まだ鼻声だし、呼吸も少し荒いわよ?」
「そうさせてもらおうかしら。あ、そうだ咲夜」

床の間に戻ろうとしていた霊夢は、ふと振り返り咲夜を呼び止める。

「冥界で何やら一悶着があるみたいよ。どうやらあんたが壊した結界で綻びが生じた見たいね。
面倒だとは思うけど、冥界に行って結界の修復をお願いするわ」

あまりにも素っ気なく、あまりにも不条理な言い分にハトが豆鉄砲を喰らったような顔をしている咲夜。
すぐに我に戻ると、霊夢を引き留める。

「ま、待って!私はただのメイド、結界に関しては専門外だわ! 」
「……あー、それについては冥界に変なのがいるからそれに頼むといいわ。
今は冬眠中かしらね。頑張って探してきてね……」

霊夢はそういうと、手を振りながらさっさと床に就いてしまった。
一人残された咲夜は、やれやれと言った感じで一つ深い溜息を吐いた。

「全く、異変解決も楽じゃないわ。取りあえず冥界に行って、その誰かさんをたたき起こせばいいのね。骨が折れるわ」
一度準備を整えるべく、紅魔館に戻る咲夜。
準備が終える頃には日が傾き、夜の帳が降りはじめていた。
逢魔ヶ時……人と妖怪の境界があやふやとなる時間。
夜が降りてくる……