リディア・チンとビル・スミス
本格的なハードボイルドとはいえないかもしれないが、その香りのするシリーズを紹介しよう。
S・J・ローザンの2人の私立探偵を交互に主役にしたシリーズである。
ニューヨーで活躍する2人の私立探偵は、どちらかが主役で、一方は端役や場合によっては重要な手掛かりをつかむ役を引き受ける。お互いの相手を思う気持ちなども少しずつ出てくるようになり、読者としては、二人の関係にも目が離せない。
主役の2人とは、中国系アメリカ人女性探偵リディア・チンとピアノの腕前がいい中年白人私立探偵ビル・スミス。謎解き要素もあり、また登場する人物の印象深さはピカイチ。中国風の薀蓄を披露するリディアの母はもちろん、2作目に出てきたアイダ老など地味ではあるが、忘れられない存在感がある。
【リディアとビルを主役としたシリーズ・タイトル 長編のみ-全部文庫あり】
「チャイナタウン」(1994年)リディア・チン
「ピアノ・ソナタ」(1995年)ビル・スミス
※シェイマス賞受賞(参考:http://www.ne.jp/asahi/mystery/data/AW/MM/PWA_F.html
)
「新生の街」(1996年)リディア・チン
「どこよりも冷たいところ」(1997年)ビル・スミス
※シェイマス賞受賞
「苦い祝宴」(1998年)リディア・チン
「春を待つ谷間で」(1999年)ビル・スミス
「天を映す早瀬」(2001年)リディア・チン
※シェイマス賞受賞
「冬そして夜」(2003年=邦訳は今年)ビル・スミス
※シェイマス賞受賞
最新の8作目である「冬そして夜」は未読であるが、個人的には1作目と2作目がよかった。このシリーズは、確実に順をおって読んだほうが面白い。最近の著作ペースは決して早いとはいえないので、興味を持った方は、1作目を探してみてください。