【メモ】相続問題の基礎知識 | ぬうむ

【メモ】相続問題の基礎知識

わたしの経験の範囲で相談が多かった離婚問題についてはすでに3回にわたって書いたので、今度は相続について書いていこうと思います。本体の部分と関連部分の2回に分けて、Q&A方式でいきます。



1.いつ相続は始まるの?


A.人が死亡したときに始まる。遠く離れていて、滅多に連絡を取り合っていなかったとしても、相続が始まるのはその人(=被相続人)が死亡したとき。ただし、相続放棄・限定承認をする場合は、自分のために相続があったことと、遺産の内容の概略、つまり、借金が多かったことなどを知ってから3カ月以内ということになる。


2.誰が相続するの?


A.配偶者(戸籍上の。以下同じ)がいれば、常に相続人になる。他に相続人になるのは以下のとおり。
  第一順位=子ども(被相続人が死亡する前にすでに死亡したが、その子、つまり被相続人から見て孫がいれば孫)
  第二順位=親(ただし、第一順位の子、孫、曾孫等がいない場合)
  第三順位=兄弟姉妹(ただし、第一順位の子等と第二順位の親がいない場合。兄弟姉妹が以前に死亡していれば、その子に限って相続人となる)


配偶者、実の親子でなくとも養子縁組しているなど、戸籍に記載されている(場合によっては、死後子からの裁判で子であることが認められた場合も。この場合、その前にした相続の分割協議はやり直すことになる)ことが必要だが、借家に住んでいる場合の住むという権利は、内縁の妻でも承継する。


3.何を相続するの?


A.被相続人の死亡により、相続人は包括(ほうかつ)的に遺産を相続することになる。相続する遺産には、プラスのものだけでなくマイナスのものも含まれる。ただし、例外的に身元保証などその人特有の立場、人柄に基づいてなされた債務は相続しない。


《代表的な遺産の例》土地建物、預貯金、株式、市場流通価値のある骨董品、その他の動産、契約上発生する/した債権・債務(借金など)。これ以外にも法律上義務づけられた固定資産税の納税義務(※)などがある。
※固定資産税の納税義務については、異論がある。毎年1月1日の実質的所有者に納税義務があるが、死亡した年度分については相続人に納税義務があるとわたしは個人的に考えている。


4.相続人が複数いる場合どのくらいずつ分けるの?


A.(1)遺言があれば原則として、それが優先される。原則としてというのは、相続人であれば相続するという期待権が一定の範囲で法律(民法第1028条)で保護されているから。(2)遺言がない場合は、相続人全員の協議で決めることになる。遺言があっても相続人全員が合意すれば遺言と異なる分轄でも構わない。(3)遺言がなく、協議もまとまらないという場合は、法律が定めた「法定相続分」を基本に最終的には裁判所が決める。


《法定相続分》
○配偶者と子の場合 → 配偶者1/2、子1/2(子が複数の場合は、この1/2を均等に割る)
○配偶者と親の場合 → 配偶者2/3、親1/3(親が複数の場合は、この1/3を均等に割る)
○配偶者と兄弟姉妹の場合 → 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4(親が複数の場合は、この1/4を均等に割る)


 なお、相続人である子や兄弟姉妹が被相続人死亡の前に死亡しており、それらに子どもがいる場合は、本来受けたであろう親(=被相続人から見て子や兄弟姉妹)が受ける割合で受けることになる。だからたとえば、相続人に2人の子どもがいたが、1人は死亡しておりその子に孫が2人いる場合、(生きている)子が1/2、死亡した子の子ども(=孫)2人は、各1/4となる。さらに、婚姻以外で生まれた子(=非嫡出子)が相続人になる場合その子の法定相続分は、婚姻中に生まれた子(=嫡出子)の半分になる。


5.遺言がなく話し合いをしたいが、うまくいかない場合は?


A.(知恵としての話し合いの進め方はあるが、法律上の考え方を解説しているので省略させてもらう。)
まず、家庭裁判所で調停をする方法がある。裁判所であっても、調停は裁判ではないので手続も簡単。弁護士に頼まなくても大丈夫だし、費用も数千円で済む。ただし、話し合いの延長なので結論が出ない場合もある(「不成立」または「不調」)。
そうなったら、裁判しかないが、裁判で争われるケースでは多少の寄与分・特別受益分は認められるもののほぼ法定相続分に近い割合で分割することになるケースが多い。