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はじめに
毎日きちんと3食食べることが健康の基本。そう信じて生活してきた方は多いのではないでしょうか。しかし最近の研究では、むしろ食べない時間を意識的に作ることが、若々しさを保つ鍵になるという見方が広がっています。
今回は、生物学の視点から見た「食べすぎ」のリスクと、細胞レベルで若返りを促す仕組みについてお伝えします。
現代人は本当に食べすぎている
私たちの体は、もともとギリギリのカロリーで生きるように設計されています。野生動物を見ればわかるように、自然界では毎日お腹いっぱい食べられる環境の方が珍しいのです。
ところが現代社会では、いつでも好きなときに食べ物が手に入ります。コンビニは24時間営業、冷蔵庫には常に食材が入っている。この「いつでも食べられる環境」が、実は体に大きな負担をかけているのです。
実際、過食している人がカロリー制限を行うと、代謝の負担が減り、生活習慣病のリスクも下がります。その結果、健康に生きられる期間が延びる可能性が示されています。
ノーベル賞が証明した「細胞の若返り」
ここで注目したいのが「オートファジー」という仕組みです。2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した研究テーマでもあります。
オートファジーとは、細胞内で古くなったり壊れたりした部品を分解し、再利用する仕組みのこと。エネルギーをつくるミトコンドリアや、形が崩れたタンパク質などを分解して、新しい部品の材料として使うのです。
この細胞の「リサイクルシステム」が活発になると、細胞は常に新鮮な状態を保てます。つまり、老化のスピードを遅らせることができるのです。
そして重要なのは、オートファジーはエネルギー供給が控えめなときほど活発になるという点です。だからこそ、適度なカロリー制限が若さを保つことにつながります。
16時間断食は本当に効果的なのか
最近よく耳にする「16時間断食」。食事の間隔をしっかり空けることで、オートファジーのスイッチがより強く入ることがわかっています。
動物実験では、18時間程度の断食で寿命が延びるという結果も出ています。人間の場合も、16時間程度食べない時間を作ると、健康状態が改善するという報告が複数あります。
しかも、毎日続ける必要はなく、週に1〜2回でも十分な効果が期待できるそうです。
具体的には、夜8時までに夕食を終えて、翌日の昼12時まで何も食べなければ16時間。実は私たちは寝ている間も自然と断食しているわけですから、その時間を少し延ばすだけと考えれば、それほどハードルは高くないかもしれません。
無理せず始める「食べない時間」の作り方
とはいえ、いきなり16時間断食を始めるのは難しいという方も多いでしょう。そんな場合は、まず「なんとなく食べる」習慣を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
お腹が空いていないのに、食べ物が目の前にあるからつい手を伸ばしてしまう。テレビを見ながら、スマホを見ながら、無意識におやつを口にしてしまう。そういった「ながら食べ」をやめるだけでも、食べない時間は自然と延びていきます。
大切なのは、必要な栄養はしっかり摂りながら、総カロリーを適切に抑えること。極端な制限は逆に体を壊してしまうので注意が必要です。
適度なストレスが体を強くする
実は、カロリー制限や断食は体にとって一種のストレスです。しかし、ストレスは必ずしも悪者ではありません。
近年の研究では、適度なストレスはむしろ老化を遅らせる可能性があることがわかってきました。これは「ホルミシス効果」と呼ばれる現象で、軽いダメージや負荷が体の修復機能を活性化させるのです。
運動後の筋肉痛がその典型例です。筋肉が一度壊れることで、体は修復作業を始め、結果として以前より強い筋肉が作られます。
同じように、適度な食事制限も体にとってはポジティブなストレスとなり、細胞の修復機能を高めてくれるのです。
まとめ
「1日3食しっかり食べる」という常識を、少し見直してみる時期かもしれません。
もちろん、栄養不足になるような極端な制限は禁物です。しかし、「食べない時間」を意識的に作ることで、細胞レベルで若返りを促すことができるという科学的根拠は確かに存在します。
まずは週に1回、16時間の断食にチャレンジしてみる。それが難しければ、なんとなく食べる習慣を減らすだけでも効果は期待できます。
年齢を重ねても若々しくいたいという願いは誰もが持っているもの。その答えは、意外にも「食べないこと」の中にあるのかもしれません。
あなたも今日から、自分の「食べない時間」を見直してみませんか。
