話は戻りますが、にわか貴族となった「海軍兵学校」出身者達のエリート意識は、抜き差しがたいものがあったそうです。

海軍の中でも、「海軍兵学校出身ではない人達」に、私は色々とお話をお聞きする機会がありましたが、とにかく「海兵出身者」は評判が悪かったです(中には、山口多聞・角田覚治 両将の様に武士道精神のある立派な海兵出身者もいます)。

撃墜王の坂井三郎先生も、「海軍兵学校」出身者の抜き差しがたいエリート意識が国を滅ぼした、というような事を言っていたそうです。 

坂井三郎先生いわく、戦後に航空幕僚長に就任して自民党の国会議員にまで出世した源田実海軍大佐(戦後は空将)は、「一度も空中戦をやらないで、いつも後方で指揮していただけ」の人だったそうです。
源田大佐はご存知の通り、山本五十六の腹心の子分であり、国益を大きく損ねた真珠湾奇襲攻撃やミッドウェー海戦、台湾沖航空戦において、その責任の中枢にいた人物です。

南雲や草鹿や源田といった海軍上層部の人間達の行動を見ていると、「責任」という概念が最初から欠けている様な気がします。

また源田は昭和39年には、あのカーチス・ルメイに「勲一等旭日大勲章」を授けるように、熱心に手配しました。これは実現しました。源田の努力によって。

カーチス・ルメイは言うまでも無く、東京大空襲と原爆投下を指揮した人間です。
この受賞には、さすがに社会党・共産党からクレームがつきました。
「自民党政府はアメリカの手先か」
「空襲で焼死した幾多の日本人を、何だと思っているのか」と。

これでは、どっちか右か左かわかりません。
マルクスが言ったように、「反対物は一致する」のです。
源田実空将、答えていわく「ルメイは航空自衛隊の発展に貢献があった」と…。
私は、そういう問題ではないと思うのですけど…。

※ちなみにこの時、ルメイの胸に勲章をつけてあげたのが、旧陸軍軍人である浦茂 航空幕僚長です。

浦茂空将は終戦時に、ホツダム宣言受諾に反対する陸軍省部の中枢にいた人です。ルメイの胸に勲章をつけた時、どんな気持ちだったのでしょう。
(否定的な意味ではなく)浦茂空将についても、私はいずれ調べたいと思っています。

とにかく、山本五十六以下「海軍兵学校」出身の受験エリートの多くは(全部ではない)、骨の髄までの親英米派が多いのです。
だって日本海軍はイギリスによって育てられたのですから。
戦前には海軍同志で、人的な交流が相当あったそうなので。

※ちなみに、日本の学校教育は自分で考えるよりも暗記重視で、教科書の内容をよく暗記した人間が優秀とされます。
これは、指導者ではなく「指導される人」を生み出す教育です。
一方、アメリカの学校教育はディベート重視、かつ、反対意見ウェルカムだとの事。
これでは、指導者の資質に差がつくのは当たり前です。