ショックを受けたものは布団でした。

交際6年目にして初めて彼の家を訪れ、その何度目かのある日、

リビングに続く和室にある押し入れの戸が、その日は締め忘れたのか、大きく開いており、

中からピンクのローズ柄の、言うならば年季の入った布団が、外へ飛び出していました。

ピンク色の花柄だからといって、
女性の布団とは限らなかった

…とは後から思ったことです。


また、もしあの布団の色が、
水色やベージュだったら、
私が後から知ったことも、
知らないでいられただろうな、
と思います。

世の中には知らないでいいことってたくさんありますね。

既婚男性などは、奥さんの選ぶ布団カバーの色柄をむしろあまり気にしないかもしれませんよね。

でも私はピンク色と薔薇を見た時に、亡くなった夫人の布団と思ってしまって、心臓バクバクになりました。


それに…
よりによって彼は以前私に、「月子のものはもうほとんどを処分したから」と自分の方から話していたことがありました。 

(私から彼に、先妻さんのモノを捨ててほしい、等と、結婚する前に言ったことはありません。もちろん見たくはないですが…(^_^;))


彼は私を喜ばせるためにわざわざ嘘を言ったのだろうか?

彼は私と6年も付き合いながら、毎日ずっとこれにくるまれていたのだろうか?

まだ私の知らない彼の奥さんへの慕情を知った様な気がして、ショックでした。

さんざん悩んで、意を決して聞いてみたところ、

いつも優しい彼が、あれは自分の布団だ、と言い張ったきり、妙に説明少なく、言葉短く、あとは何を聞いても、何も言わなくなってしまいました。


結論から言うと、

ピンクの布団について、
彼の言うことは嘘ではなかったです!

彼はやっぱり誠実な人でした。

でも、同時に私の女の勘(?)も当たっていました。

どういうことかって?

彼の様子がおかしいので、こんなことで深刻な問題に発展するのは悲しいと思い、
私がこだわるのは私のヤキモチである、と謝ると、

何と彼は、

「言いたくなかったのだが、布団は妻と共有だった」

と言うのです。

そこまで言われてもピンと来ず、

私は、

和布団を「共有」しなければいけないほど、お金がなかったのだろうか?!🤔

とグルグル考えていました。

そんなはずはないのだけれど!

それともモノを大切にする彼のこと、

新婚時代は借りる部屋はたいてい狭いから、
初めに彼の布団を2人で使い、
長い間のうちにだめになって、つぎにピンクの奥さんの布団を使って、布団を大事にしてきた、のだろうか??

などと、トンチンカンなことを考えて混乱してました。(笑)

正解に迫りながらも、果てしなく遠のいて。

彼は言いました。

亡くなった夫人とは新婚以来、和室でずっとダブルサイズの布団を使ってきたのだと。


いい歳をして大失恋した様に、 
私はしばらくその後、
自宅の(結婚前でした)自分の部屋のベッドに突っ伏して泣きました。

しかし、泣いているうちに、だんだんバカバカしくなってきました。

泣いてる自分のことがおかしくなったのです。

こんなに泣いたのはいつ以来かしら?

好きな人に彼女がいた、と知った昔の失恋の涙に似ていました。


私は昔から不倫は出来ない人間です。
それは私がヤキモチ焼きだからだと思います。

だってバカバカしいもん。
「それはそれは結構なことで!
どうぞどうぞ仲良くして下さい」
と思って、自分の気持ちが冷める様に自分を持っていってしまいます。

でも、死別者の男性とお付き合いする女性のヤキモチは、どこか既婚者との恋愛のそれに似てるかもしれません。

彼には妻がいないのではなく、亡くなった妻がいる、と言える点において。


でも、泣きながら、思いましたよ。
たとえ夫婦の布団がダブルサイズだとしても、それを亡き夫人と使っていたのは過去の話!

その時の彼は私のダーリンではなく、既婚者!

既婚者に妬くなんて、バカバカしい!
そうだった。

そう思わないとやっていけません…。
交際は自分で決めたことなので。


しかしダブルサイズって、大人2人で140cm幅。
狭いのではないかと思いますが、いかがですか。(余計なお世話ですが💦)

私だったら!
とても我慢出来ません。

彼が大好きだから、寝るまではくっついていたい。

でも、眠る時は、ぐっすり眠りたい派です。


それにしても、亡き先妻と暮らした家はパンドラの箱です。

(もちろん子どもたちには思い出あるとても大切な家ですよね☺)

自分の老後の資金は減りますが、可能なら、古くても別のところに住む方が気持ちは格段に楽な気がします。

過去のことは気にしない、でも、過去の物を目の前にするのはつらいですね。

彼は私が嫌な思いをすると思って、でも私が聞いてくるので、悩んだそうです。

今では「布団事件」として二人の間では笑い話になっています。


お読み頂きありがとうございます。