2015年1月14日に東京区政会館にて行われた
特別区議会議員講演会「高齢化に備える」に出席いたしました。
講師は慶應義塾大学 清家篤塾長です。
日本の高齢化は、
(1)「水準(レベル)が高く」
2060年ごろには、65歳以上の高齢者が40%になります。
5人に2人が65歳以上になります。
(2)「スピードが速く」
ヨーロッパが50~100年かけているところを日本は4倍のスピードで高齢社会になっています。
(3)「奥深さがある」
高齢者の中でもさらに高齢の75歳以上の方の比重が急速に高まります。
65~74歳/75歳以上
2 : 3 ← 2025年 団塊の世代が75歳以上になるタイミングです。
1 : 2 ← 2060年
地方ではすでに高齢化が進んでいますから、
今後23区・東京のような大都市の方が高齢化が進んでいく、ということでした。
そして、高齢化は経済の発展を阻害します。
(1)財政を脅かします。
(2)労働力人口が減り、生産面でサプライが阻害されます。
(3)年金暮らしが消費を減らし、需要面で成長を阻害します。
そこで、清家塾長は以下の3つの解決策をお話になりました。
まず、高齢化のスピードを鈍化し、マイルドにするための緊急の課題は、
(1)「少子化サポート」です。
「待ったなしで、今やらなければダメ。急がないと日本の人口が拡幅できない!」と、
清家塾長は強調していました。
1カップルが、2.07人くらい赤ちゃんを産むと人口は横ばいになります。
2005年は1.26人と最低の数でしたが、現在は1.43人。
理想は2人以上だそうです。
子どもを産み育てやすいように、どのように環境を整備していくか?
産みたいときに躊躇なく産めるように、子ども子育て支援、保育サービス、育児サービスが急がれます。
また、子どもたちが育つまでにあと25年かかりますが、
その間は、女性と高齢者という大きな2グループの労働可能人口を増やしていくことが必要だということです。
・女性(子育てと就労の両立・ワークライフバランス)
・高齢者(生涯現役社会にする)
日本、韓国、台湾のような低出生率の国は、長時間労働で、母親が子どもを見るケースが多いです。
北欧諸国のように女性の就労率が高い国は、出生率も高いと、OECDの調査でも結果が出ています。
長時間労働の社会ですと、子育てのために夫婦のどちらかが仕事を辞めて子育てをします。
子育てをしている間に失う生涯賃金(推定)は以下の通りです。
◆大卒女性の(平均的)生涯賃金 → 2億5千万円くらい
◆10年間、仕事を辞めて専業主婦 → 5千万円くらい(-2億円)
◆パートを続けた人 → 1億円くらい(-1.5億円)
これは女性にとってだけではなく、企業にとっても2億円の経済価値を失うことになります。
1人目の子どもの時に、父親がどれだけ子育てを手伝ったかによって、
2人目を産みやすくなると言われています。
長時間労働を柔軟にする、短くする、フレキシブルにするなど、
企業における早急の改革によって、社会全体にマンアワーが増え、
日本経済の成長力を高めていくことができる、というお話でした。
次に、(2)「高齢者の生涯の労働力を伸ばす」
生涯現役社会になれば、生産面でも供給面でも、社会保険・税の負担をマイルドに減らすことができます。
働きたいという意思と能力のある方には働いていただき、年金暮らし以上の消費をしてもらうことができます。
日本人はヨーロッパとは真逆で、「まだまだ働きたい!」という方が多くいらっしゃいますので、
その気持ちを受け止め、65歳以上の方々のやる気をくじかないようにすることが大切です。
中小企業では定年がなく、賃金体系も年功的な賃金ではなく、生涯現役の制度の企業も多いので、
そのノウハウを大企業や役所が見習うと良い、というお話もありました。
さらに、(3)「社会保障制度改革を進める」
年金と医療介護では、改革の視点が異なります。
年金は比較的容易な問題で、お金で完結するため、仕組みさえ改革すれば完了します。
しかし、医療介護は同じようにはいきません。
医療介護の給付はサービスであり、制度改革だけではなく、
やる気を持ち、良いサービスを提供しようとする人材を確保せねばなりません。
◆20世紀型「病院完結型」から、21世紀型「地域完結型」→地域包括ケアへ
急性期の病気 → 慢性期の疾患
診療科別の病気 → 複数の診療(いくつかの診療科にまたがる病気)
集中的に治療 → 完全には治癒しない
治癒を目的 → 緩和が目的(年齢を重ね、生活の質を高める)
最後に、「付加価値生産性を高める」
企業の収益や賃金の元になる付加価値を高めていくというお話でした。
1人あたりの労働者の労働時間を減らし、時間当たりの生産性を高めるには、
人の能力を高めていくしかありません。
1人1人を手塩にかけて育てていくことが必要とのことでした。
豊かな高齢社会実現のために、
豊かさを将来の世代に伝え、将来の世代の負担をこれ以上重くしないために、
今の世代が負担をすれば、将来の世代が大泣きしなくて済む、ということです。
また、配布されたレジュメに以下の抜粋があり、ご紹介がありましたので、転記いたします。
◆奴雁の視点、公智の判断、実学の根拠
「奴雁」
「群雁野に在て餌を啄むとき、其内に必ず一羽は首を揚げて四方の様子を窺ひ、不意の
難に番をする者あり、之を奴雁と云ふ。学者も亦欺の如し。天下の人、夢中になりて、
時勢と共に変遷する其中に、独り前後を顧み、今世の有様に注意して、以て後日の得失
を論ずるものなり。」
(福澤諭吉『民間雑誌』)
「公智」
「人事の軽重大小を分別し軽小を後にして重大を先にしその時節と場所とを察するの
働を公智と云う。」
(福澤諭吉『文明論之概略』)
「実学」
「本塾の主義は和漢の古学流に反し、仮令ひ文を談ずるにも世事を語るにも西洋の実学
(サイヤンス)を根拠とするものなれば、常に学問の虚に走らんことを恐る。」
(福澤諭吉『慶應義塾紀事』)
さらに、オランダの政治家、ユルーン・ダイセルブルーム氏が講演会での慶應の学生の質問に、
以下のように答えたというお話もありました。
「約束をする政治家(promise)でなく、
今の問題にどうやって対処できるか?解決策を示す人(solution)が求められるようになってほしい。」
今、目の前で起きている課題に目を向けることは、もちろん大切です。
しかし、同時に、将来の世代の豊かさや負担を捉えることができる視点を持ち、
どこに均衡点を見つけるのか?トレードオフの関係に注意しながら判断をし、
論理と実証をもって解決策を見出す政治をする。
清家塾長の講演をお聞きして、
現在、そして、未来の品川区民の皆様に、解決策を示すことのできる政治家になりたいと思いました。