[あなたの処方箋:/89 いびき/2 重症者は脳や血管に負担]
(毎日新聞 2011年2月16日)
「あなたもいびきをかくのでは?」
国立病院機構福岡病院の中野博・睡眠センター長は記者(33)を見て言い
当てた。
身長173センチ、体重65キロ。
顎は細めで「標準体形」を自任してきたが近年、おなかが出てきた。
就寝時は別室に避難する妻の観察によると、睡眠時無呼吸症候群(SAS)では
ないようだが、中野センター長は「音の強いいびきはそれだけで要注意」と
警告する。
中野センター長によると、SASを発症していない88人を、いびきの音の強弱で
4段階に分けて調べたところ、最も弱いレベル1は就寝前と起床時の血圧に
差がなかったのに対し、レベル4は起床時に13%上昇した。
別の調査では、いびき重症者は軽い人より脳に血液を送る頸動脈に動脈硬化が
起きる確率が3倍に増えた。
いびきによる呼吸は、睡眠時に舌やのどの筋肉が緩み、舌根が沈み込んで
気道咽頭をふさぐため、細いストローでするようなもの。
専門家は「努力呼吸」と呼び、強い音は努力が激しい証拠だ。
睡眠中も盛んに心臓が働き続ける上、血中の酸素飽和度が繰り返し下がるので
脳や血管に負担がかかる。
体形もカギになる。
首やのどに脂肪がつく肥満は一大因子だが、細身でも顎が小さいと舌が
収まらず気道に落ち込みやすくなる。
顎の細いスリムな人が中年太りすると黄信号だ。
いびきが強いほどSASを発症する傾向も高まるという。
中野センター長は「家族が眠れないような音なら早めに治療を」と呼び
かける。
=つづく
http://mainichi.jp/select/science/news/20110216ddm013100205000c.html