
今年見た美術展の中で一番の収穫。
ヴェルヘルム・ハンマースホイ(1864-1916)はデンマークを代表する作家のうちの一人。
風景画、人物画も描いたが、彼の作品中で特質すべきは室内画
1898年から1909年に転居するまで住んだ「ストランゲーゼ30番地」の住宅を
彼は数多く描いている。
描かれた部屋も窓も扉、家具、壁の装飾、光、そして妻イーダさえも
キャンバスの中の構成要素の内の一つであり
それ自体が主題になることはない
静寂極めるキャンパスの中で、それらの組み合わせそのものを描き、
その追求を幾度となく繰り返している。
その主題のない静寂が包む世界は、ある意味、「建築写真」と似ている。
主題を押し殺した空間、そしてその展開がそこに見える。
そこに宗教的観念もなければ、強いな押しつけもない。
ただ「美」を素の状態で見せたかったのではなかろうか?
なぜ自分が、ここまでハンマースホイに引き込まれたか考えてみると
彼の美の探求への試みが、自分の建築の創作のアプローチと似ているように思える故だろうか?