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CD「Stories」

ライナーノーツから、曲紹介(前半)を記します。

 

I DON’T STAND A GHOST OF A CHANCE WITH YOU

インストではセロニアス・モンクがソロアルバム『Thelonious Himself』で弾いたバージョンが有名です。“Ghost Of A Chance”というのは英語の古い言い回しで、「無いに等しい希望」と解釈されます。今回収録した”You Go To My Head”にもその言葉が出てきて、報われるはずもない片思いを歌っています。「もしチャンスをくれたなら、私はあなたの恋人として全てをかけるのに。でも、それは私の儚い夢でしかない。」切ない恋の歌です。

 

IT AIN’T NECESSARILY SO

タイトル訳は「必ずしもそうとは限らない」。挿入歌「サマータイム」で知られるガーシュウィンのミュージカル「Porgy and Bess」の中の一曲です。1930年代、差別と貧困に苦しむアフリカ系の人々のささやかな暮らしを描いた作品。「現世は辛いけれど死んだら天国に行きたいと、神に祈り、良い信者たろうと努力するけど、聖書に書いてある奇跡って、ちょっと不思議すぎない? 小柄な聖人が巨大な怪物と戦って勝ったとか、900年も生きた人がいるとか、どうも信じがたいんだけど?」そんな素朴な気持ちをユーモラスに歌っています。

 

SESAME STREET

「みんな家でメソメソしていないで出ておいで!セサミストリートには楽しい事しかないよ!」個性的なマペットたちに誘われて、子供たちが夢中になる、アメリカのTV番組「セサミストリート」。子供向けですが、豊富な挿入歌にはジャズやブルース、ラテンのフィーリングがたっぷり。なんとレイ・チャールズやスティービー・ワンダーも番組ゲストとして出演しています。そのメインテーマを歌いました。今回は最後のコーラスをなんと!レイにもスティービーにも負けない日本ジャズ界の重鎮である今回の参加ミュージシャンさんたちにお願いしました。結果はお聞きの通りです。

 

FIVE FOR

5/4、つまり四分の五拍子。曲そのものの拍子がタイトルになっています。ブラジルのジャズを代表する歌姫フローラ・プリムがフュージョン全盛期の1978年に発表したアルバムからの一曲です。歌詞が無くメロディーもシンプルですが、5拍子という挑戦的で緊張感があるリズムに惹かれます。オリジナルではベーシストのジャコ・パストリウスがデュエットしています。アルバムでは高瀬龍一さんのトランペットにユニゾンとハーモニーで演出をお願いしました。

 

TAKE THE A TRAIN

言わずと知れたエリントンの有名曲です。1930年代にNY(ニューヨーク)に最初にできた地下鉄がA路線、つまりA列車でした。A列車の行先であるNYのハーレムは曲が出来た当時、黒人文化が開花した街だったそうです。差別や貧困に苦しむ日常を過ごす人たちが一張羅の背広やドレスを着て、陽気な笑顔をきらきらさせて、憧れのハーレムに向かう列車に乗り込んでいく姿を思い描きます。

 

HARPO’S BLUES

シンガー&ソングライターであり、ギタリストでもあるフィービ・スノウが1974年に発表した初アルバムの収録曲。ライブ音源で彼女自身の曲の解説を聞きました。「10代の頃チャーリーというとても変わったボーイフレンドがいた。いつもデート代は私持ち、遊びと言えば、他人の玄関チャイムを鳴らして逃げたり、夜中の動物園に忍び込んだり。しばらくして別れてしまったけど、彼のために書いた曲です」

歌詞は「もし私が柳だったなら風の中の音楽に任せて揺れることが出来たのに」と始まります。そして、「大人になるのはイヤ、人生の苦しみを耐えなくてはならないから」で終わります。

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