今年も残りあと少しです。

今年観た映画をなんとなく振り返りました。

 

CD制作や、コロナ以降の海外旅行の再開などで

あまり映画を観に行く時間が作れなかったです。

しかし、その中でもとても良いものに巡り合えたと思います。

 

No.1は何と言っても「TAR」。

 

天才的女性指揮者の栄光と転落、そして(おそらく)再生の物語。

映画の中にたくさんの仕掛けがあるのですが、全く説明が無く、

解読できない暗号だらけの映画で、少しでもその謎を解くため

結局4回観ました。

TARは自らの自己中な行いの報いを受ける形で失脚するのですが、

音楽に対してだけは純粋で真摯で妥協がなかった。

その描き方に共感しました。

 

次点はインド映画「エンドロールの続き」

 

いわゆる「ボリウッド」なエンタメ映画とはまったく別世界のドラマです。

インド版「ニュー・シネマ・パラダイス」的な売り方をされていましたが、

「ニュー・シネマ..」のように大人の感傷で描かれた子供時代ではなく

「子供」を超えた一人の人間の感性で世界を描いています。

こちらも2回観ました。

 

次はイラン映画「君は行く先を知らない」

 

これも、主人公は子供です。

車で長い旅に出た一家。それは逃避行のように思える。

その理由は主人公の幼い少年には伝えられていないし、

映画の中でも明示はされない。

殆どセリフらしいセリフが無く、演技とは思えない子役の

少年の自然な無邪気さと、秘密を持った家族の陰鬱な

表情がコントラストを産みます。

 

最後はキルギス映画「父は憶えている」

 

 

舞台はキルギスの山奥の辺境の村。

30年前にロシアで行方不明になっていた父親が

息子一家のもとに戻ってきた。しかし、父は記憶と声を

失っていた。

初めて観るキルギス映画でした。

こちらもほとんどセリフも無く、挿入歌は登場人物たちが

気まぐれに楽器も無く歌う生声の歌だけ。

数少なかった観客の中にはいい感じにお昼寝している人も。

私も危うく落ちるところだったです。

しかし、観終わってみると、なんだかじわっと心の奥に

感じてくるような、そんな映画でした。

 

振り返ると「TAR」以外はアジア・中東映画で、

しかも初めて観る監督の作品でした。

ヨーロッパ作品にも良いものがありました。

ハリウッド系豪華キャストやエンタメ映画はほぼ印象に

残りませんでした。RRRは面白かったけど。

 

今年は行き当たりばったりに観る映画を選んでいたので、

来年はもう少しアンテナを働かせたいと思います。