昭和も後半
二十歳のある日
友だちの女の子を車で送っている道すがらの話
高校の部活の同級生たちの集まりだった
弓道部なので男女同じ練習メニューで仲もよかった
その日は久しぶりに6人集まり食事を楽しんだ
帰りの車
どういう段取りだったのか覚えていないけど、ボクはTさんを後ろの座席に乗せて走っていた
たしか途中駅で誰かを降ろしたと思う
ただ
大宮駅まではけっこう遠く、そして道も混んでいた
なので二人の時間はとても長いものになった
最初は
今日は楽しかったねという会話で弾んでいた
気がついたら夕焼けこやけ
バイパスの高架をとろとろと走りながら、少し込み入った話も始まる
または
込み入った話を思い出す
部活で仲良かった友だちはTさんのことが好きだった
だから
久しぶりに会うセッティングをしたのだ
だけど
上手くいかなかったらしい
Tさんは好きな人がいるらしい
あとで聞いた話だけど。
Tさんは沈んでいく夕陽を見ながらぽつぽつと話す
ボクの知っている彼女は明るく活発な、大きなメガネが特徴の部活でのムードメーカー
そんな彼女に友だちは惚れていた
だけど今日の彼女はとっても大人の雰囲気
ふと
彼女が「この曲はなんて曲?」
と聞いてきた
KENWOODのコンポからはジャーニーのオープンアームズが流れていた
曲の説明をすると
「とってもいい曲」と言って夕陽を眺めていた
あとは会話もなく
車内はスティーブペリーの声しか聞こえてこなかった
ボクの車は走り屋使用だが、このときばかりはつとめて静かに運転した
この曲を聴くといつも思い出します