『観る・学ぶ』グループでは、ヨコハマトリエンナーレ2017の作家や作品について知りたい、学んだことを発信したい、ツアーガイドをやってみたいなどの希望を持った仲間が集まっています。来年に向けて、他の美術展ではどのようなガイドがされているかを知ることや、加えて現代アートの奥深さに触れてみようということで、様々な美術館・美術展を観に行き、学んでみることにしました。

 

こんにちは。『観る・学ぶ』グループの大久保です。

 

9月25日(日)、『観る・学ぶ』メンバー5名+横美ボランティアメンバー2名の計7名で「横浜の森美術展9」に行ってきました。今回はその報告です。

 

 

今までのガイドツアーとは趣が異なり、今回は屋外《森の中》でのツアーとなりました。当日天候が心配されましたが、メンバーの日頃の心がけの良さ(?)が天まで届いたのか、前日までの雨模様とは打って変わり、真夏のような晴天の中でのツアーとなりました。

 

横浜線中山駅からバスで約20分、バス停到着後、車道沿いを徒歩10分ほど行ったところに会場がありました。展示会場は文字通り「森の中」であり、それまでの太陽の灼熱とは打って変わったひんやりした空気の中、マイナスイオン(?多分)に包まれて美術展入り口に到着。受付で登録を済まし、午後1時よりガイドツアーがスタートしました。

 

 

尚、この美術展は「GROUP創造の森」という市民ボランティアグループがヨコハマアートサイト事業として横浜市の支援を受け行っているとのことです。そのせいか受付でもボランティアの方々が和気あいあいと談笑されており、独特の手作り感に包まれていました。

 

さて、本展は、以前参加経験のある国内作家7名と海外からの参加者3名(ドイツ1名、韓国2名)の作品11点が展示されており、ツアーガイドの吉川陽一郎氏がそのひとつひとつにつき丁寧に解説しながら森を巡るというものでした。尚、吉川氏はガイドもされていますが、同時に今回出品されている作家でもあり、その解説は作家ならではの視点で、各作品の素材の説明、作家の人物像、制作経緯、エピソード・苦労話等々織り交ぜて頂き、通常のガイドとはまた違った趣があり興味深いものがありました。

 

最初に案内されたのはドイツ人の作家による作品で、「でこぼこの森の地面に平面を築く」という発想から、テグスを20メートル四方の敷地にひざ丈ほどの高さに縦横無尽に張り巡らし、テグスが交差している箇所にピンク色(蛍光色)の小片(レースをピンク色に染めて小さくしたもの)を無数に貼り付けた作品。可憐なお花畑にも見える興味深い作品ですが、「これだけのテグスを張り巡らすだけでも相当な重労働だろうな」と余計なことを考えてしまう力作です。

 

続いて日本人作家の作品で同じく「森に平地を作ってしまおう」という発想でテグスを用いて木々に巻きつけた作品が続き、さらに大小様々な「はしご」を木々の間に立てかけたりした作品などを眺めながら歩いていると突如物干し竿に洗濯物を干している高さ4-5メートルはあろうかと思われる棕櫚(シュロ)で出来た女性のオブジェが出現したり、木組みの恐竜が現れたり(鬱蒼とした森の背景に見事にハマッていました)、山桜の数本の幹の間に巨大な草のボールが置かれた作品が現れたりと、それぞれの作品群は独創性に富んでおり、気づいたらあっという間にツアーが終了していました。

 

石黒和夫《森の恐竜 トウケラトプス》

 

個々の作品の詳細は省かせて頂きますが、今回鑑賞した全ての作品で感じたのは作品の持つ自然への畏敬と共感、限りない愛着でした。通常の現代アート展で時折感じる緊張感(たまに「ごっつしばいたろか!」と思う時もあります)が今回ではまったく感じられなかったのはこの自然の持つ力に癒されたからでしょうか。移動には多少のアップダウンもありましたが、11作品をすべて観終わった後は心地よい疲労感と満足感に浸ることができました。

 

ガイドの吉川氏によれば、今回の美術展においては、作品の制作にあたり、各作家は森の中で自分の作品を表現するのに一番ふさわしい場所を選択して制作を行ったということ、したがって、場所の地形・森の背景も含め全体として一つの作品としていること、また、作品の素材も一部(レースとか糸とか)を除いて極力現場にある部材を調達しているとのお話もありました。この点他の美術展には無い大きな特徴と思われます。

 

 

参加したメンバーからも「想像していた以上に良かった」「森の中で癒された」「通常の展示会と異なり自然も取り込んで一体として作品に仕上がっているのが興味深かった」「ツアーガイド自身が出品作家なので素材も含めた細部の説明があり分かり易くて良かった」「作家の話を事前に聞くということは作品を理解するうえで非常に有益であり、今後のトリエンナーレに向けた活動の参考としたい」等の意見が出されました。

 

今回で『観る・学ぶ』グループの美術展ガイドツアー参加プログラムは3回目となりました。現時点では次の具体的予定はありませんが、参加メンバーの間ではこれで終わりにするのではなく引き続き継続していこうという意見が大勢を占めました。 従いまして、これからも『観る・学ぶ』グループでは美術展ガイドツアーへの参加を企画していきたいと思いますので、今回参加されなかった方、サポーター活動に興味のある方も是非機会を見てご参加頂きたいと思います。