こんにちは。フリペチームの上田です。
今回のヨコトリーツ!号外では、会期中のイベントをレポートします。
まずは、10月18日に開催された“アート×建築「忘却の海」を航海する船のつくりかた”についてです。


10月18日、展覧会クローズ後、新港ピア会場カフェ・オブリビオンにて、建築家の日埜直彦氏を迎え、サポーターズサロン “アート×建築 「忘却の海」を航海する船のつくりかた” が行われました。お話が面白かったので、感想は控えめに、内容をお伝えしたいと思います。



日埜氏は、カフェ・オブリビオンを作品として出展しているアーティストとしても名を連ねているが、展示会場の空間設計でも関わってきた。2008年から3回連続で横浜トリエンナーレの空間設計を担当している。

日埜氏のお話は、まず美術展の会場を描いた絵画を見せるころから始まる。ここから、美術展を成立させる要素を読み解いていく。作品、作品を掛ける壁、光、観客、観客が動くスペース … また、美術品とそれ以外が区別できることが必要になる。端的に言えば額縁の内と外なのだが、これを空間でも示さなければいけない。

この額縁=フレームという概念は重要で、額縁だけでなく、自転車のフレーム、家のフレームなどもある。人に合わせて作り、それであとが決まってくる。写真でもフレームは重要な役割を果たす。注目してもらいたいもの、見せないものを規定する。

光も重要な要素で、作品ごとに光の要求が異なる。適切な色で見せないといけないし、作品の保護という観点もある。作品に照度さらには用いる照明器具まで指定されているものもある。

一方、それぞれの挿話で統一のテーマが見えてこないといけない。第3話ではMoe Nai Ko To Baが重要な役割を担う。登る台を設けること、キーンホルツの十字架の作品に向かわせることで、特別な場所と感じられるようにした。

ご自身の作品カフェ・オブリビオンについても語っていただけた。天井から吊り下げた構造物は煙の形を表していている。重さでたわむ。上に乗るものという認識されない形になっているので、強度はそれほどもたせていないが、引っ張るくらいは大丈夫。揺れを楽しんでくださいとのこと。

質疑応答では「3回連続だが、違いは?」という質問があった。今回は構成が決まっていて、早く作品も決まっていたのでやりやすかったとのこと。ヨコトリ2014を構成する章立てはフレームであり、フレームがしっかりしていることがキーになっている。また、通常は作品と作品の関係性、響きあいをどうするかという問題が常に出てくるが、今回は特にそういう必要はなかった。フレームに徹することができた。

Yoko-Treats! 1号で、あいちトリエンナーレ・アーキテクトの武藤隆氏のインタビューを行ったが、そのときの話題の一つがアーキテクトという役割。「壁を立てたり照明を設置したり」という点では日埜氏も同様の役割になるが、あいちと違うところは、古いビルを使うということがヨコトリ2014ではなかったところだろう。ただ古いビルを使う場合に必要な「法律上の手続き」は横浜でも見られて、今回は避難路を変えるところで消防署の許可が必要だっとのこと。お役所というと法律・条例を文字通り解釈する融通のきかない人たちというイメージがあるが、消防署の人たちの思いは「安全」で、思いは同じ、話せばわかってくれるとのこと。日埜氏はむしろそういうプロセスを楽しんでいるように見えた。

アートと建築の関係というと、ル・コルビュジエやザハ・ハディドのようなアート作品としての建築を思い浮かべますが、今回、アートを支える建築という視点を知り、視野が広がったと思います。 (ウエダ)