七尾市ののとじま臨海公園水族館は9日までに、富山湾で捕獲した
新種とみられるクラゲの人工繁殖に成功した。
同館によると、同種の人工繁殖は国内2例目。富山湾は国内有数のクラゲの宝庫である一方で、
生態が不明な種類も多いことから、同館では人工繁殖や飼育を通じ、
謎が多いクラゲの進化過程に迫る考えである。
このクラゲは、2004年に七尾市沖合の定置網で網を上げる際の水流に乗って
水面に現れたところを初めて採取された。06年5月に数万匹が一挙に見つかったこともあった。
同館は当初、このクラゲを国内でも珍しい「ハナアカリクラゲ」とみていたが、
かさにひだ状の部分があるなどの相違点を発見。
鑑定した京大フィールド科学教育研究センターの久保田信准教授が、
新種の可能性があることを突き止めた。
同館は個体の鑑定と並行して、08年4月に同市内の定置網で捕獲した個体から採卵し、
クラゲの元となるイソギンチャクに似た「ポリプ」に成長した個体を、
水温の異なる条件で飼育してきた。
そして昨年12月、水温10度で飼育したポリプに、水流で刺激を与えたところ、
かさの直径が約1ミリの稚クラゲを生み始めたという。
稚クラゲは9日までに42匹に増え、毒がある触手を使って動物プランクトンを食べて成長している。
直径8ミリのかさを持つ個体もおり、春には同5センチの成体になるとみられる。
同館によると、クラゲは成長過程で進化前の種類の特徴が現れることから、
このクラゲが属すると推測されるエボシクラゲ科全体の生態研究の
突破口になる可能性もある という。
繁殖に携わる同館の池口新一郎展示・海洋動物科長は
「富山湾にはいまだ生態が分から ないクラゲも多い。
繁殖を通じて未知の部分の解明を進めたい」と話した。
北国新聞
http://www.hokkoku.co.jp/subpage/H20100110104.htm
直径8ミリのかさを持つ稚クラゲ
http://www.hokkoku.co.jp/subpage/H20100110104.jpg