動機 横山秀夫 文春文庫
『動機』『逆転の夏』『ネタ元』『密室の人』を収める中編小説集。
『動機』は、警察手帳を一括保管をを行っていた警察署で30冊の手帳が紛失し、内部調査を進める警務畑の調査官の話。
『逆転の夏』は、女子高校生を殺した罪で12年間の懲役を終えた男に見知らぬ男から殺人依頼の電話が入り、最初は相手にしなかったが何度も金が振り込まれ、男の職場での状況も悪化してついに依頼を受けることにする話。
『ネタ元』は、地方紙の女性記者が警察回りの仕事に倦怠を感じていたところ全国紙からの引き抜き話が来る。全国紙が自分に興味を示したのは以前裁判所の書記の女性から情報を貰ったことに思い出し書記の女性とコンタクトをとると思わぬ事実を知る。
『密室の人』は、裁判官の安斎は公判中に居眠りをして妻の名を口走ってしまう。新聞記者に嗅ぎつかれ上層部から何とかもみ消すように指示されるが思わぬ事実を知ることになる。
どれも最後に大きなどんでん返しが設定されている。
警察官、元懲役囚、新聞記者、裁判官とそれぞれ立場は違いますが各々の立場で懸命に仕事をし生活している市井の人々が思わぬ事件に巻き込まれ懊悩するという流れは共通しています。
『ネタ元』の女性記者はどうも万引き癖があるようですがそういった部分は深堀されていません。
そういった意味ではどれももっと長い小説にできる素材のようにも感じられました。
そこを簡潔にまとめるのが作家の腕なのでしょうか。