北海道を味わう 小泉武夫 中公新書 | うみパパのブログ

北海道を味わう 小泉武夫 中公新書

副題が、四季折々の「食の王国」。

Ⅰ春の味覚(第1章 海が魚を背負ってくる、第2章 大地に萌える味、第3章 春は料理の心をくすぐる)、Ⅱ夏の味覚(第4章 銀輪飛び交う北の海、第5章 太陽と土と水の申し子たち、第6章 夏の料理は心を躍らす)、Ⅲ秋の味覚(第7章 豊饒の海に銀輪が躍る、第8章 豊饒なる大地からの贈りもの、第9章 秋の料理は心に残る)、Ⅳ冬の味覚(第10章 凍れる海で魚介が肥える、第11章 越冬野菜と保存食の知恵、第12章 冬の料理は心を温める)、通年の味覚(第13章 おらが道民の味自慢)という構成で、北海道の山海の美味珍味を紹介する。

 

著者は著名な発酵学者で大学退官後は北海道の水産会社から招聘され石狩市の研究室で天然調味料の開発に携わるなど常に北海道とは縁を持っている。

春夏秋冬、海鮮と農産物を紹介する。

 

原文から引用する。

「醤油皿に醤油をさし、その脇にヤマワサビを添え、それではいただきましょうかと刺身を一枚箸で取り、それにワサビ醤油をチョンとほんの少しつけて食べた。口に入れた瞬間、ヤマワサビの快香が鼻から抜けてきて、口の中ではニシンの刺身のポッテリとしたやさしく柔らかい身が歯に応えてホクリ、トロリとし、そこからまろやかなうま味と耽美な甘み、そして脂肪からのペタペタとしたコクなどがジュルジュルと湧き出してくる。それをヤマワサビのツンツンと醤油のうまじょっぱみが囃し立てるものだから、たちまちにして私の大脳皮質の味覚受容器は充満するのであった。」

新鮮なニシンの刺身を食べた食レポである。

開高健を想起させるような豊かな表現で思わず腹が鳴ってしまうような描写が随所にちりばめられている。

 

「頬落舌踊」なる熟語は著者のオリジナルではなかろうか?

本書を読んだら北海道に行きたくなることは間違いない。