冠(コロナ)〈廃墟の光〉 沢木耕太郎 新潮文庫 | うみパパのブログ

冠(コロナ)〈廃墟の光〉 沢木耕太郎 新潮文庫

序章 冬のオリンピア、第一章 ささやかな助走、第二章 始めようぜ!、第三章 普通の国のジャンヌ、第四章 ストーン・マウンテンまで、第五章 華と爆弾、第六章 スターのいる風景、第七章 カーニバル。カーニバル、第八章 祭りは終わった、という構成で1996年のアトランタオリンピックの観戦記。

 

このノンフィクションは冬にギリシャのオリンピアの競技場の遺跡を訪れる場面から始まる。

著者は一人での行動を好みどうしても『深夜特急』のようなバックパッカーの旅行記のような雰囲気が縦横している。

メジャーなマスコミの取材ではなく講談社の雑誌の「ナンバー」に寄稿するために取材許可証を得ているものの、移動は基本的にはプレス用の無料バスと地下鉄で観戦する種目も当日に予定表を見て決めるというような自由で個人的なオリンピック観戦者に限りなく近く見えます。

 

公共交通の利用のためホテルに戻るのは深夜の一時を過ぎるのが普通で食事も満足にとることができない。

もう何度もオリンピックを取材しているものの金の力でアメリカが開催国になって経緯を面白く思っていなくて、大スポンサーであるコカ・コーラは意地でも飲まないというこだわりを見せています。

サマランチ会長による商業路線をオリンピック衰亡の兆候と考え、バスケットボールのドリーム・チームのような存在はその象徴的なものとしています。

 

水泳、体操、バレーボールなど日本がかつて得意として種目で惨敗を繰り返す様子を近くで見て伝えています。

とても選手を近く感じさせます。

アトランタオリンピックでは五輪公園で爆弾テロ騒動があり、それも含めて自分がオリンピック会場のお祭りに参加して、明日はどの会場でどの競技を見ようかという臨場感が本書の最大の魅力だと思います。