伏流捜査 安東能明 集英社文庫 | うみパパのブログ

伏流捜査 安東能明 集英社文庫

警視庁生活安全捜査隊の活躍する中編小説『ヒップ・キング』『稲荷の伝言』を収める。

 

『ヒップ・キング』は渋谷の若者たちが集まるクラブで脱法ハーブが取引されているという情報で当該クラブを監視していると麻薬中毒症状を示した男を逮捕するも全体の解明に至らず、さらに捜査を進めヒップダンスを子どもたち教えている男に行き着くが、その男は家庭内ネグレクトの被害に遭っている少女を利用していることを突き止める。

『稲荷の伝言』は特養の緑恵苑で入所者が振り込め詐欺にあったというので捜査を始めると一部の入所者に虐待の痕跡が見られること、また苑の会計に使途不明金が発生していることが明らかになりその3点が繋がっていく。

 

生活安全捜査隊は殺人、強盗といった凶悪犯罪を扱う部門ではなく日常的な些細な事件に向き合っている部隊で、それだけに脱法ハーブ、ネグレクト、老人虐待など現代社会の闇の部分と対峙することになる。

実際にはなかなか気づきにくい、また気付いても立件しにくい案件であり、さらに加害者側にも相当の事情があるというところまで含めて本書では結構丁寧に描写されています。

なかなか読み応えがありました。