ほむら 有吉佐和子 文春文庫 | うみパパのブログ

ほむら 有吉佐和子 文春文庫

『ほむら』『赤猪子物語』『千姫桜』『紫絵』『「薬湯便覧」由来』『第八戒』『落陽』『石の庭』を収める短編小説集。

 

『ほむら』は破戒僧に20年間食事を出し続けた老婆が娘を給仕に出し、僧がそのことに対して「修行を積んだ結果今は何とも思わない」、といったことに失望し庵を焼く。

『赤猪子物語』は、帝に懸想された娘が帝が来てくれることを待ちながら年を取り80年後に会う話。

『紫絵』は、豪商の息子として生まれたが絵が巧みで孤高の生涯を送った絵師の話。

『「薬湯便覧」由来』は、美貌を誇るが男を近づけず婚期を逃しかけていたお勢が顔に醜い傷のある薬屋の跡取り息子と所帯を持つ話。

『第八戒』は、長崎の女郎屋で生まれ女郎となったおげんが、自ら仕える花魁が踏絵で捕らえられると自分も踏み絵を踏めずに処刑される話。

『落陽』は、中国の皇帝が3000人という美女がいる後宮で女を選ぶために絵師に絵を描かせるが、絶世の美女に出会った絵師は装飾なしに絵を描いたために皇帝の勘気に触れてしまう話。

『石の庭』は、室町時代に竜安寺の作庭をを任された庭師が庭か自分の名前のどちらを選ぶべきか対立する兄弟を描いた戯曲。

 

どれも作家の初期の頃の作品のようです。

『ほむら』のストーリーは仏教にある主題の中から取り入れられたものと思います。

その他の作品も明確なテーマをもち、それを巧みに物語として簡潔にまとめています。

作家の才気溢れる様が横溢しています。