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理想の親とは、どんな親?

                           

 

 今年のユーキャン2021年新語・流行語大賞に「親ガチャ」が選ばれた。この言葉は、“子供が親を選べない事を嘆く際に使われている言葉”なのだそう。何か都合の悪い事があると、なんでも親のせいにしてしまう若者が最近は非常に多いそうだ。受けられる教育レベルの差が親の経済力によって決まってしまう事は衆知の事実。しかし、昔はそこまで親のせいにする子供は少なかったように思う。理想の親とは、果たして、どのような親の事を言うのだろうか?

 

 僕の両親は、子供が勉強出来るようになる事を求めていなかった。僕はいつも一人で勝手に勉強していた。妹は手に職を付けたいという理由から、高校から衛生看護科に行き看護師になった。弟は工業高校に進学し、卒業後すぐに就職した。スポーツに関しては長男だった僕が一番、運動神経が鈍く、弟の方が水泳の選手として大会に出場したりしていたので優秀だった。大学まで進学できたのは僕だけだったが、早く社会人になった妹や弟の方が先に結婚し、一番勉強できたはずの長男が最後まで相手が見つからなかった。

 

 父は無宗教で、ひたすら自分の好きな歌だけにのめりこみ、子供達に説教したりする事は一切なかった。母は僕が小学校高学年になる頃から仏教に夢中になりだし、般若心経を唱えるようになった。母に連れられて、いろんな寺に行くようになったが、母から就職や進路について意見を言われた事は一切なかった。母は父の歌の趣味には無関心だった。両親は互いに相手の主義・主張には一切干渉しないという態度だった。子供達に対しても同じで、子供らは、自らの進路は自分で決める必要があった。

 

 両親は夫婦喧嘩を見せなかった。子供達に対しても暴力や説教は一切なく、お互いに価値を認め合うような雰囲気があった。愚痴や悪口がなかったのはいいことだったが、僕は勉強が出来る事を褒められた事も一度もなかった。親からの承認欲求は一切なかった。お互いに期待しない家族。期待はないが、何かしてもらえば感謝し助け合う家族。経済的に恵まれてはいなかったが、親の事を子供が嘆いたりする事は全くなかった。僕にとっての理想の家族と言えば、そのままで自然にありのままだった両親が、ただ側にいてくれるだけで、僕の理想の両親だったように思う。