たった2冊の本で、人生が変わった話。ほんでほんで……

 

 

「コラー! いい加減に仕事せーよ! いつまで喋っとんねん!」

 新卒で入社した大手チェーン。僕の最初の配属先は大阪1号店だった。

「おまえな〜。はよー仕事せーやー」

 僕はかなりキレていた。怒りに震えていた。初めてアルバイト達に怒鳴った。

 

 しかし、アルバイト君たちとて、僕のような新卒で、ぺーぺーの新入社員から怒鳴られても、まったく痛くもかゆくも、なんともないようだ。悔しい……腹が立つ……ムカつく……心の底から怒りが込み上げてくる……しかし、僕が怒鳴ったからといって、それをきっかけにしてアルバイト君たちが反省の色を見せたり、急に真面目に働きだしたりする……なんて事……あるはずがない。

 

 そうだ……この頃の僕は、人の使い方が全くわかっていなかったんだ。……そうだ……それは、僕が新卒で、まだ22歳だった頃のある日の出来事だった。

 

 急に寂しくなってしまった……急に、海を見に行きたくなってしまった……僕の新卒での最初の配属先は海のない場所だったので、仕事の休日に単に海を見るだけの為に……学生時代を過ごした神戸メリケンパークまで出かけていった。

 

 不思議だ…本当に不思議だ……海には、なぜ? こうまでして、人の心を癒やす力があるのだろうか? 僕には本当に不思議でたまらなかったが、ひたすら海を眺め続けているだけで、潮風と波間の光の揺らめきに、僕の心は完全に癒やされてしまった。

 

 そうして……大阪まで帰ってきてから、駅前でちょっと大きめの本屋さんに、ふと立ち寄ってみた。気になる2冊の本を見つけ、衝動買いしてしまった。タイトルが当時、悩んでいた事にピッタリ、ハマっているような気がしたからである。しかし思いかえせば、この時のこの2冊の衝動買いは、大当たりであった。僕が初めて買った、本格的な自己啓発書だったのではないだろうかと思う。

 

 早速、それらの本を繰り返し、繰り返し読み続ける生活を始めた。重要感を持たせる……人の立場に身を置く……誠実な関心を寄せる……聞き手にまわる……心からほめる……など。当時の僕ができていなかった事として、議論を避ける……誤りを指摘しない……命令をしない……顔をつぶさない……わずかなことでもほめる……など。そして、書かれてある事を、ただ単に読むだけではなく、できるだけ仕事の現場でも、どんどんどんどん実践していくようにした。

 

 そうすると、どうだろう。周りの反応がだんだんと変わってきたのだ。アルバイト達を使う事が、できるようになってきたのだ。その時、同時に買った本は、もう1冊あった。こちらは、人生の悩み事を解決するための本である。悩みを解決するための魔術的公式……仕事の悩みを半減させる方法……悩みを完全に克服する方法……批判を気にしない方法……等が書かれている。この本に関しては、一つの章を3回づつ繰り返しながら読み進めていくようにした。

 

 そうすると、だんだんと仕事がうまくいくようになってきたのだ……アルバイトを使いこなす事ができるようになってきたのだ……そうして、僕もやがて、京都に転勤して、初めて店長を経験することができた。

 

 最初の頃は、お店に4人の深夜アルバイトがいたが、店長になって1週間後に、深夜アルバイトの不正が発覚し、本部の上司がその一人をクビにしたところ、つられてその他の夜勤も全員同時に辞めてしまった。いきなり深夜アルバイト、ゼロの店舗の店長という試練のスタートとなってしまった。当時は26時間連続勤務などという訳のわからない勤務をした日もあり、毎日一人で深夜勤務して、気合いで乗り切っていた。今から考えると、超絶ブラックな勤務である。これでも会社は東証一部上場企業だったんだけど? しかし、当時はまだ、仕事がきついの、どうのこうのよりも、店長になったという喜びの方が勝っていた。そして当時、お店の売上前年比が140%で伸び続けていた事も、モチベーションの維持につながった。

 

 やがて本部勤務になって、8店舗を担当するスーパーバイザーになった。スーパーバイザーと言うと、一般的なイメージとしては、ダメなところを指摘し、口すっぱく繰り返し本部の方針を伝えて、煙たがられている人というイメージがある。しかし、僕はそれまでに……あの2冊の本を繰り返し繰り返し読んでいたので……訪問するたびに、お店の細かい良いところをどんどん見つけて、いつもお店を褒め続けていた。もちろん、議論する事などなかったし、命令したりする事もなかった。意見が合わなかった時は、どうしたら妥協点が見つかるのか? 必死に考えて、説得する為の方法を考え続けた……そうすると、魔法のように、お店の数字は変わっていくのである。

 

 僕が担当した8店舗の売上前年比は、担当開始当初は地区ワーストで、本当にひどいものであったが、担当が僕に変わってから面白いように数字の上昇が始まった……そうして、ついにはその地区のチェーン最優秀店舗が僕の担当店の中から選ばれた。

 

 担当を開始してから約9ヶ月後ぐらいに、僕の担当店の売上前年比は、地区でトップになるまで躍進していた。地区ワーストのエリアを、たった9ヶ月ぐらいで地区トップに改善することができたのだ。これは、まさに奇跡のような出来事……ではない

 

 奇跡なんかじゃない……ちゃんとした理由がある。店舗の売上が急上昇したのは、僕が新卒1年目の時に同時に買った2冊の本に書かれていた内容をずっとずっと……愚直に実行し続けていった結果である。

 

 ここまで読んだら、もう既に読んだことのある人は、何の本か?

 お分かりだろう。

 

 ここまで読んでも、まだ何の本なのか?

 分からない人の為にタイトルを伝えたい。

 

 その2冊の本とは「人を動かす」と「道は開ける」である。著者は、2冊とも、D・カーネギー。世界中で1500万部以上売れているという、大ベストセラーである。あの斎藤一人さんも、この2冊は50回読めと言っているらしい。流石に僕はまだ、50回も繰り返し読んでいる訳ではないが、人間関係でピンチになりそうな時、これまでの人生の中で、この本の中の言葉が脳裏に浮かんで助けてくれた事が何度もあった。……とは言っても、この本とて、万能であるという訳ではない。世の中は進化している。この本の中に書かれている事だけでは解決できないような問題もたくさん生まれてくるような時代に、変わってきてしまっている。しかし、まだまだ、この本の価値は色あせていない。読んだだけで、すぐに人生が好転するという訳ではないが、この本すらまだ読んでいなくて、もし毎日人生に対する不平不満を繰り返しボヤいているようならば、まずはこの本を読む事から始めてほしいと思うぐらいの本である。

 

 ほんでほんで……これが僕の……

 

 たった2冊の本で、人生が変わったというお話だったのです。

 

 

 

※今回、オススメさせていただきました2冊の本はコレ!

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