9月18日。
どうせ雨でしょ。とすっかりいじけながら4時半起床。
そとは相変わらず、悲鳴のような強風
が吹き荒れている。
だが、予想に反して、暗い雲の隙間からほんのり
ピンク色の朝日が覗いているではないか!



行ける!行けるよ!

五時からの朝食を平らげるころには小屋前から御来光も!

カッバを着こみ、身一つで槍の穂先を目指す。
噂に違わぬ絶壁です。





ただ、ペンキで細かくルートが示されている上、
鎖や梯子(ちゃんと登りと下りが別れている)
もあって、ゆっくり登ればさして難しい岩場ではない。
山頂直下の二十メートルはある梯子はさすがに足がすくむ。
下を見ないように一歩ずつ登る。

着いた!山頂だ!!





後で知ったが、ピーク時にはこの梯子部分で山頂の
順番待ちをしなければならないほど混むらしいのだが、
嵐の後の平日の早朝だからか、先客は数人だけ。360度
見渡す限りに連なる山々をすべて独り占めである。
普通山頂にあるはずの、山の名前を書いた三角点なり
看板なりがなぜか槍にはない。小さな祠が山頂を示す唯一の印だ。

山頂でそのまましばらくのんびりする。

二十分位いたのかな。

関西弁でやたら大声で話しながら登ってくるおばちゃん
集団と入れ替わりに山頂から降りる。

山荘に戻ると、パンが焼き上がっていた。そう、ここは
小屋で毎朝パンを焼いて販売しているのだ。
クロワッサンやデニッシュを昼食用にいくつか買って、
一個紅茶と一緒にいただいてから山荘を出発。
サクサクで激しくうまい。山の上でこんな贅沢ができるなんて~と、
昨日とはうって変わって評価が上がった槍ヶ岳山荘を
後にする。

大半の人が上高地方面に下山していくなか、一人西鎌尾根に

向かう。


この辺は「槍・穂高の展望台」と言われる

そうだが、確かにきつい登りの後振り返るといつも

こんな光景が広がっていて、槍穂高に見守られているかの

ようだ。




尾根道には野イチゴが一杯。もぐもぐしながら歩く。

携帯ではうまく撮れなかったが、ライチョウの大群

(草むらに10羽以上いた!)にも遭遇。




双六からの巻き道を辿っていくと、一面にカールが広がる。

そして黒部川の源流を越えながら、緑の草原に岩がぼこぼこ

林立する風景の中をひたすら歩く。

標高3000メートル近い山で、小川がのせせらぎと

鳥の声しか聞こえない。

周りは四方5キロ位人の気配がない。


この雄大な風景を独り占めです。




・・・なんかラピュタに初めて到着した

シータとパズーの気持ちになったというか、


神様が気まぐれに創った箱庭に迷い込んだというか、


写真があまりにうまく撮れてなくて

がっかりなんですが、

本当に本当に素晴らしかったです。


2時間ほどで今日の宿、三俣山荘に到着。

小屋前からはこんな風景が。

いやあ、贅沢だ。






ハイシーズンには廊下にまで泊り客があふれるという

三俣山荘ですが、この日は一階のみ、約20数名のお客さん。


荷物を割り当てられたスペースに置きに行くと

「あーーーーーーー!」と2段ベッドの上から声が。


なんと、昨日のおにぎりおじさん!!

すごいね、まったく同じルートだったのか~と

二人で騒ぐ。


おじさんは実は自宅も私と同じエリアで

若いころから好きだった北アルプスの山々を、

登っていない山域も含めて登りなおしているそう。

明日は雲ノ平を経て烏帽子に泊まり、さらに翌日高瀬ダム

に降りるフル・裏銀座ルートを辿る予定らしい。

いいなあ、いつか行ってみたいもんだ。


同室のおじさんたちの話だと、この小屋には昨日まで、

私と同様に単独縦走しているテント泊の女性が

ご飯を食べにきていたらしい。

なんと、剱岳から槍までを、

1週間くらいかけて歩いてるんだと。

おにぎりおじさんも若いころに

やったことがあるとのことなんだが

すごいなあ。。というか、

歩行距離だけで100キロあるでしょ。あせる


三俣山荘の夕食は、なんとご飯味噌汁だけでなく

エビフライまでお代わり自由という太っ腹!


山小屋食とは思えないクオリティの

高さで、飲まなかったがサイフォンで

淹れるコーヒーとかも

あるらしい。

スタッフもてきぱきとして明るく気持ちがいい。

昨日槍ヶ岳山荘で会った

同室のおばさんが三俣山荘を酷評していたので

ちょっと不安だったのだが、

個人的には槍ヶ岳山荘よりこっちのほうが

全然好きだ。

小さな小屋なのですぐいっぱいになりそうではあるが、

今まで泊まったところのベスト3に入る小屋だった。


しかも水場が黒部源流という、贅沢きわまりない環境。

川で手足や顔もじゃぶじゃぶ洗ってしまいました。

槍ヶ岳山荘はほとんど水がなかったから、これはとても

ありがたい。石鹸を使っての洗顔も

歯磨きもオッケー。助かりました。


小屋からは赤く染まる槍ヶ岳が間近に迫る。

もっといたい気持ちだが、明日は山を降りるのだ。