14話①です。
グクドゥの銃弾を右腕に受けたキム・ジャンヒョンでしたが…銃を構えるグクドゥに向かって車のアクセルを踏み込み、建設現場から逃げ出します。
慌てて後を追うグクドゥと、曲がりくねった山道で暫くカーチェイスを繰り広げた後…対向車を避けようとしたジャンヒョンの車は、ガードレールを突き破り崖下の池へ転落。
急いで車から降りて、崖下を覗き込んだグクドゥですが…真っ黒な池の中に沈んでいく車が見えただけで、ジャンヒョンの姿を確認する事は出来ませんでした。
建設現場に救急車が到着して、ギョンシムとジャンヒョンの身代わりになった警備員が運ばれて行きます。
救急隊員や警察が慌しく行きかう現場には、あの不気味な覆面が残されていました…。
第14話『バトルの序幕』ジャンヒョンの車が落ちた池の周りを捜索する大勢の警察官たち。
チームの刑事たちもやって来て、クレーンで引き上げられるジャンヒョンの車を見つめています。
しかし、車の中にジャンヒョンの姿は無く…あの高さから落ちたのなら助かっている筈はないだろう…と話す刑事たち。呆然と、ジャンヒョンが沈んでいる池を見つめているグクドゥに『そんな顔をするな!事件は終わったんだ。』と声をかけるチーム長。
その時、グクドゥにミンヒョクからのメールが届きます。『ボンスンは俺が連れて帰ります。』
そのメールを見て、安心したような…寂しいような…複雑な表情を浮かべるグクドゥ。
ボンギが家に帰って来ると、そこには電話も繋がらず帰りの遅いボンスンを心配するチルグの姿。
その頃、ボンスンはミンヒョクの地下室のソファーで眠っています。グッスリ眠るボンスンを見守るように見つめるミンヒョク。
ふと思い出したように立ち上がり、ボンスンの携帯からチルグに電話をかけます。
ボンスンだと思って電話に出たチルグは『今晩は。お父さん。私はアン・ミンヒョクです。』と言うミンヒョクの声に驚きます。『連絡できなくて申し訳ありません。ボンスンは今一緒にいます。』
『ああ、一緒にいるんだな。まだ帰ってこないから心配していたんだ。』と、チルグ。
『すみません。すぐに連絡しないといけなかったのですが、ボンスンが…今、ぐっすり眠っているので…。』
『何かあったんですか?』
『はい。あっ、でも今は大丈夫です。起こしましょうか?』
『それなら、起こさなくていい。』と、少し黙ってから…『私は…アン代表を信じています。』と言うチルグ。
『分かりました。ご心配されないで下さい。』そう言って電話を切った後、娘を心配するチルグの気持ちを思いやるように…眠るボンスンを見つめるミンヒョク。
切った電話をボンヤリと見つめるチルグにビールを渡すボンギ。
『代表と一緒にいるって?』と言って、チルグの隣に座ります。
『ああ。心配するなって。』
『二人は付き合ってるのかな?』
『良い人みたいだな。』と、少し寂しそうに言うチルグ。
『良い人なだけじゃなくて、俺たちにとっては恩人だね。』と微笑むボンギ。
ビールを一口飲んで、『ボンスンは…いつも傷付いてるんだよ、心が…』と話し始めるチルグ。
『ボンスンは小さい頃から自分自身を上手く扱えなくて、力を間違ったふうに使ってしまわないかと俺たちは心配していたんだ。いくら力が強くても、ボンスンが外にいる時は心が休まらなかった。怪我したらダメだろう?今回みたいに…彼がいなかったら…ああ!』と、考えるのもイヤだというようにビールを飲むチルグ。
そんなチルグを見て、今度はボンギが話し始めます。
『僕が医大になぜ入ったか知ってる?父さん。 姉さんのためだったんだ。うちの家に受け継がれる力の秘密が何なのか、しっかりと研究して見つけ出したかったんだ。そして、平凡に暮らしたがっている僕の姉さんを…助けてあげたかったんだ。』
そんなボンギの思いを知って『ボンギ…うちのボンスンは…平凡に暮らす事ができるだろうか?』と、しんみりと尋ねるチルグ。
『難しいだろうね。だから心配なんだよ。僕はい~っつも姉さんが心配だよ。』と溜息をついてビールを飲むボンギ。
『こんな時は、ボンギがオッパみたいだな。』と言ってボンギの頭を撫でるチルグ。『僕はオッパだよ。』と言って笑うボンギと、そんなボンギを見て嬉しそうに笑うチルグ。
素敵な父と弟ですね
そんなふうに、チルグとボンギがいつも心配しているボンスンは…
やっと、深い眠りから目を覚まします。
ボンヤリと、瞼を開いたボンスンの瞳に映るミンヒョク。
ボンスンは、しばらく身動きもせずに…じっとミンヒョクを見つめます。
そっと…静かに瞳を閉じているミンヒョクの頬に触れようと手を伸ばしたけれど、諦めたように手を止めて起き上がろうとするボンスン。そのボンスンの手を掴んで、自分の腕の中に引き戻すミンヒョク。
驚いてミンヒョクを見つめるボンスンと優しくボンスンを見つめ返すミンヒョク。
ボンスンの手を掴んだまま、何も言わずにボンスンを見つめ続けて…
『見ています。』とミンヒョクを見つめたまま答えるボンスン。
『俺を愛してくれ。』『(愛)…して、います。』その言葉と共に、ボンスンの瞳から零れ落ちる一粒の涙。
『お前はピーナツみたいに小さいから、俺の心に収まるけど…お前の心の中に俺はいないみたいだな。』と言って、寂しそうに微笑むミンヒョク。
そんなミンヒョクの胸にそっと手をあてて『いますよ。』と、ミンヒョクを見つめるボンスン。
しばらく黙ってボンスンを見つめていたミンヒョクは…
『사랑합다 .(愛してる)』と、一言だけ…。
少し驚いたようにミンヒョクを見つめるボンスン。その短い、たった一言に…どれほどの想いが込められているのか…。
頑なだったボンスンの心に、静かに…でも確実に流れ込んで来るその言葉。何も言葉にしなくても、その答えをボンスンの瞳の中に見つけたように…ボンスンをしっかり抱き締めるミンヒョク。
安心したように、ミンヒョクの胸に顔を埋めるボンスン。
翌朝、ボンスンの部屋のドアを開けたジニは、昨夜ボンスンが帰って来ていない事に気付いて…
『まさか…ボンスン~!』と、ニンマリ
慌てて階段を駆け下りて、バッタリ出くわしたボンギに『ボンギ!あんたの姉さんが、ついに一晩過ごしたわよ!』と、大興奮『代表と一緒にいるって。』と笑うボンギ。
『そうでしょう!』と満面の笑みを浮かべるジニ。
『昨夜、父さんが電話で話したんだよ。でも、何かあったみたいだよ。』と言いながら、洗面所に入って行くボンギ。
『何が!?』と尋ねるジニの携帯に電話がかかってきます。
『お母さん…。』とギョンシムの声。
『あら、ギョンシム!まあ、久しぶりね。あんた連絡もしないで!ソウルに来ないの?』と尋ねるジニですが、電話の向こうで『お母さん!』と言って泣き出すギョンシム。『あんた、泣いてるの?あんた、どこか悪いの?ギョンシム!?』と驚くジニ。
ミンヒョクが目を覚ますと、隣にいたはずのボンスンの姿が無く…『ボンスン!』と、名前を呼んで、不安そうにボンスンの姿を探すミンヒョク。
その頃、ボンスンは…台所のテーブルに突き刺した箸を、じっと見つめていました。
冷蔵庫に目をやり、中からリンゴを取り出して、この前のように手絞りでリンゴジュースを作ろうとしますが…どんなに力を込めてみても、その形を全く変えようとしないリンゴ…。
必死にリンゴを絞ろうとするボンスンを目にするミンヒョク。その様子に、ボンスンの力が本当に消えてしまった事を悟ります。
近付いてくるミンヒョクに気付いて『起きたんですか?ギョンシムはどうなりましたか?』と尋ねるボンスン。
『心配するな、大丈夫だ。病院にいるのはイヤだから、治療が終わったらお前の家に行くって。』
『ああ…、良かった。』と安心するボンスン。
少し躊躇いながら『お前、もしかして…』と、力の事を尋ねかけて言葉を止めるミンヒョク。沈黙の後で『それにしても、お前は本当に言う事を聞かないな!そんな事は分かってたけど、すごいよ!俺が何て言った?一人で行くなって言っただろう!?まだ、凄く腹が立つけど、我慢してるんだ!』と怒ってみせます。
『ごめんなさい。もう私、家に帰ります。ギョンシムに早く会わないと。』
『分かった。』と一言だけ言って、ボンスンが絞ろうとしていたリンゴを包丁で切り始めるミンヒョク。
ミンヒョクは、ちゃんと文明の利器(ジューサー)を使ってリンゴジュースを作り『朝に食べるリンゴは薬なんだろう?お前がそう言ったじゃないか。』と言って、ボンスンにジュースを渡します。
そのミンヒョクのさりげない優しさに、少し笑顔を取り戻すボンスンです。
「キム・ジャンヒョンに拉致された後、ナ・ギョンシムは脱出中にアン・ミンヒョク代表に…」と、パソコンに打ち込むものの、すぐにその文章を消してしまいます。
何と書けばいいのか…悩むグクドゥに外から戻って来たチーム長が声をかけます。
事件の件で、ギョンシムをアン代表が助けに来たらしいけど、自分にはどうも納得がいかない…と言うチーム長に『私がちゃんと処理します。』と答えるグクドゥ。
納得はできないけど、何か思う所はあるようで…報告書の件はグクドゥに任せる事にするチーム長。
ギョンシム拉致の一件を知ったボンスンファミリー。
ギョンシムがこんな事になっていた事をボンスンは全て知っていたのに何で私たちに話さなかったの!?と文句を言うジニに、犯人が警察に言ったら殺すって言ってたらしいよ…とフォローするボンギ。
自分の娘の事のようにギョンシムを心配するチルグ。
三人が首を長くして待っている所に、やっと戻って来るギョンシム。
玄関のドアが開く音に、先を争うように駆けて行ってギョンシムを出迎えるジニたち。
ジニに抱き締められて泣き出すギョンシム。
恐ろしい目に遭い、傷だらけのギョンシムを心から心配するボンスンファミリー。
ギョンシムのお母さんは事件の事を知っていたけどジャンヒョンから誰にも言うな!と脅迫されてジニたちに話す事ができなかったようです。
『警察は病院に入院して治療を受けるように言ってたけど、家にいても良いのか?』と、心配そうに尋ねるボンギに『病院にいるのは嫌だ。』と首を横に振るギョンシム。
すぐに釜山に帰ると言うギョンシムに『帰るにしても、食べてからにしなさい。』と言って牛骨スープ(おそらく)の材料を買いに出て行くジニ。
ボンスンを家の前まで送って来たミンヒョク。
車を降りようとするボンスンに『今日は家で休め。』と声をかけます。
『はい。あ…、私のせいで怪我をした警備員のおじさんがいたじゃないですか…』と心配そうに尋ねるボンスンに『それは心配するな。大丈夫なはずだ。俺がちゃんとしておく。俺が全部しておくから。』と、ボンスンを安心させるように言うミンヒョク。
『お前はギョンシムの事だけ気に掛けろ。』
『はい。行きますね。』と言って車を降りるボンスンに
『俺の事も気に掛けろよ。』と少し照れくさそうに言うミンヒョク。
そんなミンヒョクが可笑しくて…『はい。』と笑顔で答えるボンスン。
その答えに嬉しそうに顔を緩ませて、帰って行くミンヒョク。
ミンヒョクを見送った後、急いで部屋に駆け込むボンスン。
泣きながら抱き合い、お互いの無事を確かめ合うボンスンとギョンシム。
『すごく辛かったでしょう?酷いことされた?お腹は?お腹は空いてないの?すごく怖かったでしょう?』と泣きながらギョンシムの涙を拭うボンスン。
頷きながら『でも、私メンタルが強いでしょう。』と言って微笑むギョンシム。
『そうだね。私があんたに綺麗な服を買ってあげようと思って、お給料を貯めておいたの。あんたがあの時、欲しがってた服があったじゃない?それを買ってあげようと思ってたのよ。ギョンシム!』と、泣きながらギョンシムをもう一度抱き締めるボンスン。
泣きながら『ねえ、ボンボン。あんた大丈夫?』と尋ねるギョンシム。
『うん。私、本当に大丈夫よ。』と、何度も頷くボンスン。
『あんたの力…あの建設現場で…』と心配するギョンシム。
『ギョンシム…私…力が消えちゃった。私こうなる事を望んでいたのに、急にこうなったから気分がすごく変なの。』
『どうしよう!?』
『私は大丈夫。あんたが無事ならそれでいいの。本当に大丈夫よ。』そう言って、ギョンシムをベッドに休ませるボンスン。
お母さんに会いたいから釜山に帰る。グクドゥが頼んでくれて警察が釜山の家まで直接送ってくれる事になった…というギョンシムの言葉に安心するボンスン。
ボンスンファミリーに囲まれて牛骨スープをご馳走になるギョンシム。
ギョンシムがこんな目に遭ってるのに、何で私に言わなかったの!?と言って思いっきりボンスンの背中を叩くジニ。
『痛いじゃない!』と怒って席を立つボンスン。
『お母さん。ボンスンが…力を失ったの。』と言うギョンシムの言葉に、驚いたようにボンスンを見るチルグたち。
そんな三人の視線に、何も言えず溜息をつくボンスン。
パトカーに乗って釜山に帰って行くギョンシムを見送って、家に入って来たボンスンに『ボンスン、お母さんと話をしましょう。』と、声をかけるジニ。
『ボンスン、大丈夫よ。』と元気のないボンスンに話し始めるジニ。
ソファーに横になりながら、二人の様子を気にしているチルグ。
『すぐに慣れるわよ。そうなっても生きていけるのよ、普通の人のように。その力が無くなると、不便で空しくて、暫くはそうなるわ。でもね…お母さんが力を失って最初にした事が何か分かる?重量挙げよ。一番軽いものから、もう一度、いつもしていたように。日常に戻る事だったの。何も無かったかのように。そうすれば、また生きていけるのよ、普通の人のように。』
母のその言葉に『そうする。私もそうしてみる。』と頷くボンスン。
ボンスンの手を握り『お母さんがこれからはボンスン、あんたの面倒をちゃんと見るから。お母さんがなぜこんなにボンギだけ一生懸命に面倒を見ていたか分かる?うちの家系では娘たちが他の人の分まで全部の力を持っていくから、息子たちは皆ひ弱だったの。あんたの叔父さんもそうだった。ボンギも小さい頃から、どれだけ病気をたくさんした事か。お母さんは可哀想に思っていたのよ、本当に。これからは、お母さんがもっと頑張ってボンスン、あんたの面倒を見ていくわね。』と語る母に感激するボンスン…でしたが、『ところで、アン婿殿とはどうなったの!?』とニコニコする母に『お母さん!私がそれはやめてって言ったじゃない!』と、嘆くボンスン
そんな母と娘の会話をずっと聞いていたチルグは、嬉しそうに微笑んでまた目を閉じます。
翌朝、バス停に立っていたボンスンは、バスに乗ろうとする人とぶつかって転んでしまいます。
今までなら、ぶつかった人の方が転んでいたはずなのに…あまりにも、あっけなく転んでしまった自分に呆然とするボンスン。
私は、もうこれ以上特別じゃない。
これから私は、普通の人のように生きていく練習をしないといけない。
もう、気軽に遅い時間まで出歩く事もできないし
もう、他の人を守る事もできないし
誰かを手伝う事もできなくなった。
私ト・ボンスンは、もう本当に平凡な人になったんだ。
そんなふうに…今までの自分の人生を振り返り、気持ちを切り替える事にしたボンスン。
会社のゲートの向こうにあるのは、いつもと変わらない女戦士のタペストリー。
これまでは、彼女のように…自分の力を思い通りに使って、困っている人を助けたいと思っていたボンスン。
でも、もうそれは出来なくなってしまった…。
女戦士が『頑張りなさい。』と励ましてくれているような気がしたのか…『はい。』と呟いて、彼女に微笑んで敬礼するボンスンです。
今まで、力の強い事が嫌で仕方なくて、その力を隠す事に必死になって…平凡な暮らしがしたいと心から願っていたボンスン。
でも、その反面…その特別な力を持っている事が、ボンスンを支えていた部分もあったのでしょうね。
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まだ半分にもなりませんが、既に文字数が怪しくなってきたので一旦ここで区切ります
今週はいよいよ最終回です。
最初から面白すぎて、最後の方はトーンダウンするのでは…と、心配しましたが今の所そんな事はなさそうですね
とにかくボンスンが可愛くて、何よりもミンヒョクが素敵すぎる
そして、ジャンヒョンの憎たらしい事
ボンボン&ミンミンのも楽しみですが、ジャンヒョンがどうやって終わりを迎えるのかも凄く楽しみです!
では、最後までお付き合いいただいて有難うございました
画像お借りしました。