毎年、7月後半〜8月中旬頃まで、
各寺院さんにとって一番忙しいのが、
夏の風物詩でもある棚経です。
檀家さん宅を訪問し仏壇や精霊棚に
手を合わし、暑さに負けじと思い、
正念込めて読経をお唱えし、
先祖供養をさせていただききます。
いつも檀家さんのところに行くと、
「今年の夏は特別に暑いですね、
わざわざお参りに来ていただき、
ご先祖様もきっと喜んでいます。」
と檀家さんから優しいお言葉を
かけていただいた上、
お参りする部屋を涼しくし、
冷たい飲み物や、昼食まで準備をして、
もてなしてくれます。
私も、この棚経が楽しみでいつも
ワクワクしております。
何故ならば、普段お会い出来ない
檀家さんや、また、県外に出られている
ご家族の方々と色々なお話しが
出来るからです。
私は住職になる前は、大阪在住の
ごく一般家庭で育ちました。
お盆の時期にはよく、名古屋に住む
父の祖母を尋ねて行っていました。
その時、祖母の家に棚経に来る
住職の姿が強く印象に残っています。
袈裟を着た姿や迫力ある声での読経が、
子ども心にとっても “カッコイイ“
と思ったのです。
さらには、線香を上げるなどの
仕草にも、憧れを抱きました。
おつとめの終わりに住職から聞いた
お説法では、今でも鮮明に
覚えていることがあります。
「地獄」と「極楽」の話です。
人は死ぬと魂が閻魔(エンマ)さまの所に行き、
「極楽」に行くか、「地獄」に落ちるかの
裁き(審判)を受ける・・・、
という話をしてくれました。
閻魔さまから生前の行いを
49日間にわたって問いただされるのです。
罪を犯したり、人を騙したり、
悪行を重ねた者は、地獄に落とされる。
そこで住職は、自分が死んだ後
ちゃんと極楽に行けるように、
おばあちゃん、おじいちゃんを大事し、
お父さん、お母さんを困らせるような事をしたり、
むやみに生き物を殺したり、
虐めたりしないことを
大きな声で言われたことは、今でも忘れません。
そして、ちゃんと墓参りして、
ご先祖様にお花やお供え物を供え、
手を合わしなさいとお説法をしてくれました。
言わば躾をしてくれたのです。
幼きながら、お坊さんと接する機会が珍しく
お盆だけに会える特別な人だと思い、
会えることを楽しみにしておりました。
また、それ以外にも、お盆の楽しみは・・・。
私たち家族や父の妹家族、そして
父方のおばあちゃんの三世帯が
一緒に過ごすことが出来たことです。
一緒に墓掃除をした時は
進んで墓石を磨いたり、
親族でお花、果物やお菓子と線香を
お供えをしていました。
その後、親族揃っての食事をしながらの
団欒は夏休みの最高の思い出でした。
今思えばきっとご先祖さまも、
子孫である私たちと一緒に束の間の
お盆休みを過ごせることを心待ちに
していたことでしょう
しかし、今年は新型コロナウイルス感染症
のせいで、里帰りができない家族や、
やむを得ず里帰りを断わる家もあります。
ご先祖様も今年のお盆はいつもより
静かなお迎えだと、苦笑い
しているかもしれませんね。
コロナが終息したら、本来のお盆を
迎えられることを切に、切に願っています。
今年、お帰りなられるご先祖様、
マスクや手洗いは不要ですので、
どうかコロナ禍に懲りず、
毎年ご子孫のいらっしゃる家に
お帰りくださいね。