五月になると山々や木々たちが緑一色になり、

上を見ると空も澄みきって

気持ちも清々しい気持ちになります。

五月晴れといったような天候が続いております。

 



また、今は風の吹き抜ける音、

小鳥たちのなき声がよく

聞こえるようになりました。

さて、この二カ月の間、

毎日のようにテレビや新聞、ネットでは

新型コロナウィルス感染拡大による

政治や経済の混乱、
また感染者数の増減を表したグラフで、

どの場所で何人出たかを

よく報道しております。

そして、まだ出口の見えない自粛生活と

感染拡大への恐怖と不安が

日々つのるばかりです。

 我、寺院においても、

各種の行事や法事の中止と延期、

また、葬儀においては最小限の参列者という

形で行われるようになり、
親しい方々の参列は双方が、

自然とご遠慮するようになりました。

また、お寺にお参りくださる方々も減り、

何とも寂しい光景が続いております。

果たして、この先お寺はどうなるのか、

また、日本いや世界はこの先

どうなってしまうのか、

毎日のようにそんな思いが頭をよぎります。

完全に「コロナ禍」で

心が囚われてしまい、見るもの、

聞こえるものすべてが不安に感じ、

気持ちも段々と落ち込んでいきます。

少しでも気休めにと

部屋の片付けをしてると、

私が高野山で修行してる時に

仲間たちとの間で書いた

交換日記が出てきました。

当時、私は僧侶になる為、

高野山にある僧侶育成道場で

一年間、修行していましたが、

あまりにも厳しい日常で、
何度もくじけそうになりました。

しかし、私だけでなく

他の仲間も同じ気持ちでした。

そこで、みんなで

励まし合うように交換日記を綴り、

それぞれの辛い事、悩みなどを

共有し、励まそうとしました。

当時、私が書いた内容は

「修行する意味がわからない」

というような批判的な内容でした。

毎日、一日中道場にこもり、

厳しい規則で不自由な生活を強いられており、

ストレスもかなり溜まっていました。

やる事、成すことに嫌気がさし、

やる意味が分からなくなってしまい、

もう修行なんか辞めて帰りたい

・・・とも思いました。

そんな折、ある友人の日記に

『心暗き時は、即ち遭うところ、悉く禍なり』

また、続けて
『眼明らかなれば、即ちみちに触れて皆、宝なり』

と書いていました。

その友人に、どういう意味か尋ねてみると、

後日の日記に意味が書かれていました。

お大師さんのお言葉で


「心が暗いときは、

気分や気持ちが落ち込んでしまう、

悪い方へ考えていると何事もうまく行かず、

すべてが不幸だと感じてしまうが」

「心を明るく保てば、

希望をもち前向きになれる、

そしてどんな事でもすべて

自分にとって大切な経験へとつながる」

と書いてくれました。

その日記を読んだとき、

今の自分は暗い心だから

批判的になってしまい、

やっていることが無意味だと

思い込んでいることに気付きました。

ふと我を振り返り、

冷静になって考えてみると・・・、

 

この修行が終われば、自分も僧侶になる。

 

いつか人々を救済し、

様々な人たちに寄り添い、
心を安らかにさせてもらうのが

僧侶の勤めだから、

今やっていることは、

己を見つめ直し

心の鍛錬と広い心を養う修行だから、

挫ける訳にはいかない。

 

まずはこの修行を乗り越えようと、

その時の日記に自ら記していました。

現在の自分にあてはめてみると、

コロナ禍によって生じた不安や絶望感は、

毎日ように繰り返される

新型コロナウイルスの報道や自粛生活で
心が暗くなってしまい、

すべてが不幸だと感じることに

起因していました。

しかし、いつまでも私自身も暗い心では

これから先、希望が見えません。
だから、

今できることを一生懸命することだと

この日記を通じて感じました。

今できること・・・、
それは「祈る」ことです。

誰かのために祈ることで、

心が前向きなれます。希望も見えてきます。

だから、少しでも良いので、

みんなが前向きなれるように、

元の生活が戻れるように、祈り続けます。

人生には何かしら

「わざわい」がつきまといます。

 

その「わざわい」が自分にとって

不幸と思えば、心は暗くなり、
何をしてもうまく行かなくなり、

希望が見えなくなります。

しかし、その「わざわい」に対して

決して悲観や絶望などせず、

心を広く受け入れた時、それは
いつかしか自分の経験へと変わり、

その経験が誰かを救える智恵となり、

「希望」が見えてくるのだと思います。

 この新型コロナウィルス感染拡大により、

多くの方々が困難で不安な生活を

強いられていますが、
どうか心を明るく保ってください。

 

気分が落ち込んでいるときは、

なるべく自然の声を耳を澄ましたり、
生き生きとした緑を観てください。

 



自然とふれ合うことで、気持ちが落ち着き、

心を明るく保てると思います。

一日も早く、

新型コロナウィルス感染症が終息することを

心より祈り続けております。