あれは、3年くらい前のこと。

岡山市内から3〜4歳の女の子を連れたお母さんが、

小さなウサギのぬいぐるみを持って来られました。

そのぬいぐるみは、女の子がもっと小さい時に

おじいちゃんからもらったそうです。

大のお気に入りで、お人形さんごっこをしたりして

とても可愛がったそう。寝る時も、いつも一緒で・・・。

そのウサちゃんも、かなり傷んでしまい、

人形供養をお願いに来られたのでした。

住職の私に、お母さんから手渡されたのですが・・・、

その時に女の子は、そばで声を出して泣いていました。

私には、そのぬいぐるみも悲しげな表情に見えました。

女の子は帰り際までずっと、「ヒック、ヒック」と

泣いていたのです。

 

私は今でも、その時の女の子の表情と泣き声が忘れられません。

同時に、ぬいぐるみのウサギちゃんの悲しげな顔も・・・。

 

女の子自身は、そのぬいぐるみを気持ちの拠りどころとして、

「カワイイ」「大好き」「安心」という思いを抱いていたことでしょう。

とっても大事な友だちであり、分身でもあったのではないでしょうか。

またお母さんは、お子さまの身代わりとして災難から彼女を守り、

成長を見守ってくれているのだと考えていたようです。

女の子が成長するまで、その人形に災いから守ってもらったと・・・。

 

そうなると、そのぬいぐるみは最早、ただの人形という物体ではなく、

まるで生命あるものだと思ったことでしょう。

そんな魂の宿った彼・彼女ら(?)に別れを告げる際には、

感謝の気持ちを込めて「ありがとう!」と、言いましょう。

 

そんな想いで、当院で毎年行っているのが『人形供養祭』です。

人形を思いやる気持ちを大切にしていただきたく、

毎年、3月の最終日曜日に開催いたします。