自分で言うのもなんだけど、
案外マジメに歩いてきたつもりだ。
「勤続２０年おめでとう」
表彰された時は嬉しかったなぁ。
すでに肺転移があります。
これからは延命治療となりますが、
頑張っていきましょうね。
え？僕治らんの？
医者なんかに分かってたまるか。
でも‥‥‥
PET検査の時に見せられた現実は、
ホタルが飛んでいるようだった
まだまだ子供も小さいし、
大きな仕事もまかされてきた。
なんでなんやろ‥‥
しんどい事も泣きたい事もあったけど
僕は生きるんや。
風邪引いてもすぐに治ってきたし
癌もそんなもんやろ。
嫁さんが
「旅行でもいこうよ。」
言うてるけど、仕事休めんしなぁ。
でも、
今行かんと行かれへんようになるんかな
「東京オリンピック行こうか。」
８年後だけど、あえて言ってみた。
「チケット絶対に取ってや」
何度も何度も言ってみた。
僕は生きるんや。
何があっても生きるんや。
三年半が過ぎた頃、
思うように体がついてこなくなった。
会社もとうとう行けなくなった
僕は死ぬんだろうか‥‥‥
冬のホタルは
僕を呼んでいるかのように美しかった
冷たい心には常に家族がそばにいて
その暖かさが
時に悲しかった。
僕はもうダメかもしれないが、
癌で死ぬわけではない。
あくまでも、
僕の寿命が４９年だっただけだ。
悔しくないといえばウソになるが
みんなありがとう。
息子よ。
お父さん以上に生きるんやで
絶対に守ってみせるからね。