水嶋ヒロの小説【KAGEROU】の冒頭を勝手に書いてみた | 今酔の肴

今酔の肴

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底冷えするような冬の到来に、俺の心も共鳴していた。
誰が言ったか忘れたが、冬が好きな奴ほど冷たい人間が多いらしい。
誰が言ったか忘れたが、冬が好きな奴ほど人の痛みがわかるらしい。

いったいどっちなんだ…
そんな事を考えながら布団から出られないでいる。
もうずっとこうしている。
大きな世界に飛び込んだ筈なのに、今は布団から出る事すら儘ならない。
冬眠か…逃げているんだな。

朝の日射しが痛く突き刺さる。
カーテンを開けるのが怖い
扉を開けるのが怖い
目を開けるのが怖い
口を開けるのが怖い
もうずっと蝋人形みたいに固まっていた。

しかし太陽の温度で蝋が溶け始める。
俺にはもったいなさ過ぎる太陽
俺には眩し過ぎる太陽

何かが溶け始めた瞬間だった…
何かが始まった瞬間だった。

今酔の肴

【追記】※この作品はポプラ社さんから出る作品とは一切関係ありません