雫井 脩介
クローズド・ノート

久しぶりに誰かに伝えたい本に出会いました。


ここ数週間、ミステリーばかり読んでいたので

ちょっと違うジャンルが読みたいなあと思って書店をぶらついていた時に、

暖かい黄色の表紙のこの本が飛び込んできました。


初めの4、5ページで、恐らく結末は予想できると思います。

それでも、最後のページを読み終えたときに、

涙がこみあげてくるのを止めるとこはできないでしょう。


物語は、大学生の香恵が一冊のノートに出会うことによって始まります。

一人暮らしをするマンションの押入れで発見した、所有者不明のノート。

小学校の先生をする“伊吹さん”が書いた日記でした。

そこには、初めて担任をもった4年2組の子供たちへの愛情と

ある一人の男性への恋焦がれる気持ちがいっぱい詰まっていました。

日記を読み進めるうちに、香恵の毎日は新しく変わっていくのです。


私は時には微笑んだり、時には一緒にドキドキしたりしながら

一気に読み終えてしまいました。

はっきりいって、ストレートすぎる物語です。

特に奇をてらった仕掛けなどは何もないです。

それにも関わらず、いつのまにか没頭して読み進められる、切なさがあり、心暖まる本です。

それはこの日記にある言葉が、本当に生きているからでしょう。

その理由はあとがきを読むと実感しますが、ここではあえて触れないでおきます。

(できれば物語を読み終えてから読んで欲しいかな。)


毎日、毎日が、普通に過ぎ去ってしまっている人に、

この本はきっと、心地よさを運んでくれることでしょう。


★★★★☆