日銀ディーラーの日常 http://www.boj.or.jp/type/exp/seisaku/expkainyu.htm#04
一般に為替ディーラーの朝は早いが、日銀ディーラーも例に洩れない。2時間(夏は1時間)先を行く豪州シドニー市場で朝の取引が峠を越す東京午前7時前、1日の仕事が始まる。朝一番の仕事は、毎朝恒例の市況会議に向けた情報の収集、整理、分析である。まずは前日の欧米市場の動きと相場材料を綿密に収集、次に当日の相場展開について、強弱それぞれの材料を洗い出すと共に、市場参加者の相場観を窺い、その日の相場展開を予想する。
収集する情報は、経済指標はもちろん、要人の発言、政治日程、休日情報、市場で囁かれる噂等々多岐に亘り、紙情報(新聞、FAX、雑誌等)、電子情報(情報端末、Eメール)、声情報(電話)などあらゆる媒体を活用する。情報量は膨大かつ玉石混淆なので、短い時間内に取捨選択、整理した上で、自分なりの考えを纏める必要がある。
朝の市況会議が終わっても、ほっとしている暇はない。最近は電子情報機器の発達で、全世界の情報がリアルタイムで誰でも容易に入手出来るようになり、情報収集作業の効率は格段に向上した反面、ちょっとしたニュースにも市場が一斉に反応するため、片時も気が抜けない。予想もしなかった材料で大きく振れることは珍しくない。マクロ経済理論に基づいた分析や、統計的な手法を駆使した時系列分析、歴史的考察から政治情勢分析、果ては占星術に至るまで、あらゆる側面からのチェックが求められる。
従って、日中も情報収集と分析が間断なく続くが、電話による民間の市場参加者との意見交換には、電子情報全盛の現在でも欠くことの出来ない意義がある。市場参加者の相場観は時として千差万別であるし、彼らのセンチメントの微妙な変化が次第に大きな流れを形成していくことも少なくない。こうした市場情報の読み取りには、やはり普段の対話が物を言う。さらに、外部との対話は、日本銀行の政策運営や関係者の発言等について、自ら正確な情報を提供し、誤解に基づく市場の反応を予防するという意味で、情報発信の観点からも重要である。
さて、ディーラーの動きが最も活発になるのは、やはり為替介入を実行する時であろう。日本銀行は、法律上、財務大臣の代理人として、円相場の安定を目的とした外国通貨の売買(つまり介入)を実行することと規定されている(外国為替資金特別会計法、日本銀行法等)が、ここ為替課がその実務部隊なのである。円の相場が大きく動いて経済への悪影響が懸念される状況になると、財務省との間のホットラインが鳴り響く。数名いるディーラーやそのバックアップ担当者が、慌ただしく配置に着き、ディーリング・ルーム内が緊張感で満たされる。そして介入が決定されると、チーフ・ディーラーの指示や確認の声、ディーラーの注文の声、電話の呼び鈴等でルーム内は喧騒に包まれる。
夕方も5時を過ぎると、為替取引の中心は欧州市場に移り、通常の場合、市場モニタリング業務は欧州と米国の駐在員事務所に引継がれ、ディーラーも早朝から続いた緊張感から漸く解放される。もっとも、相場が荒れている日は、東京市場と共に営業終了、という訳にも行かない。海外市場の民間ディーラーや、海外の中央銀行の為替担当者と連絡を取り、欧米の取引時間まで相場を追いかけることは珍しくない。そのうえ、海外の中央銀行に介入を委託するような場合には、日本銀行幹部が財務省と委託先中央銀行の間に入って連絡・調整を行うため、仕事は明け方に及ぶことになるからである。
一般に為替ディーラーの朝は早いが、日銀ディーラーも例に洩れない。2時間(夏は1時間)先を行く豪州シドニー市場で朝の取引が峠を越す東京午前7時前、1日の仕事が始まる。朝一番の仕事は、毎朝恒例の市況会議に向けた情報の収集、整理、分析である。まずは前日の欧米市場の動きと相場材料を綿密に収集、次に当日の相場展開について、強弱それぞれの材料を洗い出すと共に、市場参加者の相場観を窺い、その日の相場展開を予想する。
収集する情報は、経済指標はもちろん、要人の発言、政治日程、休日情報、市場で囁かれる噂等々多岐に亘り、紙情報(新聞、FAX、雑誌等)、電子情報(情報端末、Eメール)、声情報(電話)などあらゆる媒体を活用する。情報量は膨大かつ玉石混淆なので、短い時間内に取捨選択、整理した上で、自分なりの考えを纏める必要がある。
朝の市況会議が終わっても、ほっとしている暇はない。最近は電子情報機器の発達で、全世界の情報がリアルタイムで誰でも容易に入手出来るようになり、情報収集作業の効率は格段に向上した反面、ちょっとしたニュースにも市場が一斉に反応するため、片時も気が抜けない。予想もしなかった材料で大きく振れることは珍しくない。マクロ経済理論に基づいた分析や、統計的な手法を駆使した時系列分析、歴史的考察から政治情勢分析、果ては占星術に至るまで、あらゆる側面からのチェックが求められる。
従って、日中も情報収集と分析が間断なく続くが、電話による民間の市場参加者との意見交換には、電子情報全盛の現在でも欠くことの出来ない意義がある。市場参加者の相場観は時として千差万別であるし、彼らのセンチメントの微妙な変化が次第に大きな流れを形成していくことも少なくない。こうした市場情報の読み取りには、やはり普段の対話が物を言う。さらに、外部との対話は、日本銀行の政策運営や関係者の発言等について、自ら正確な情報を提供し、誤解に基づく市場の反応を予防するという意味で、情報発信の観点からも重要である。
さて、ディーラーの動きが最も活発になるのは、やはり為替介入を実行する時であろう。日本銀行は、法律上、財務大臣の代理人として、円相場の安定を目的とした外国通貨の売買(つまり介入)を実行することと規定されている(外国為替資金特別会計法、日本銀行法等)が、ここ為替課がその実務部隊なのである。円の相場が大きく動いて経済への悪影響が懸念される状況になると、財務省との間のホットラインが鳴り響く。数名いるディーラーやそのバックアップ担当者が、慌ただしく配置に着き、ディーリング・ルーム内が緊張感で満たされる。そして介入が決定されると、チーフ・ディーラーの指示や確認の声、ディーラーの注文の声、電話の呼び鈴等でルーム内は喧騒に包まれる。
夕方も5時を過ぎると、為替取引の中心は欧州市場に移り、通常の場合、市場モニタリング業務は欧州と米国の駐在員事務所に引継がれ、ディーラーも早朝から続いた緊張感から漸く解放される。もっとも、相場が荒れている日は、東京市場と共に営業終了、という訳にも行かない。海外市場の民間ディーラーや、海外の中央銀行の為替担当者と連絡を取り、欧米の取引時間まで相場を追いかけることは珍しくない。そのうえ、海外の中央銀行に介入を委託するような場合には、日本銀行幹部が財務省と委託先中央銀行の間に入って連絡・調整を行うため、仕事は明け方に及ぶことになるからである。