ある日の公園遊びでの出来事。
鬼ごっこをしている最中、ある子の失敗に対して、周りの子が冷やかす場面がありました。

「お前、小学生なのに、ダッセー!」
「そうだそうだ!前もこんなことあったじゃん!」

見ていて気持ちの良い光景ではないため、「それはないでしょ!2対1は卑怯だ!」と厳しく注意。すると周りの子たちも便乗して「ゆーだいウザい!」などと悪ふざけ。

しばらく続いたピリピリとした雰囲気。でも、周りで冷やかしたり便乗して悪ふざけしたりするこの子たちも失敗体験があるはず。だからこそ、こうして過剰に責め立てているんじゃないか…そう思いました。そこで、

「みんなだって、失敗したこととか、周りから責められたりとかしたことあるんじゃない?俺も、こどもの頃に野球をやっててね、失敗したらコーチから殴られるわ蹴られるわ、みんなの前で泣かされるわ、本当に嫌だった。あれのせいで野球が大嫌いになったんだよね」

と、少し声のトーンを変えて話してみることに。
すると、最初に冷やかし始めた子の表情が和らぎ、目が輝きました。

「わかる!オレの父さんもスポーツのコーチで、ミスするとオレだけ引っ叩かれるし、家に帰ってからもめっちゃ怒られるんだよ」

そして、彼のこの一言をきっかけに、周りの子たちも自分たちがこれまで受けてきたことや、自分の友達が「躾」という名のもとに親から暴力を受けた話を聞いたことを語り始めたのでした。以下、こどもたちの語りです。

「学校の先生は、失敗することは大切だよって教えてくれたよ?なのに、なんで失敗したら殴ったりする大人がいるんだろうね?」
「人生は失敗するものだよね!」(素敵な言葉だなぁ!)
「知ってる?前ね、ニュースで小さな女の子がお父さんに虐待を受けて殺されちゃったんだよ!」
「酷いよね。自分のこどもを殺すなんて、信じられない…」

重たい話題。けれど、それぞれの傷を語る中で、こどもたちの表情はそれまでの引きつった鋭い表情から、本来のこの子たちの優しく温かい表情へと戻っていったように感じました。そして、それまでみんなあら冷やかされていた子も様々な生きづらさを抱えているのだと1人の子が切り出し、みんなでその子の生きづらさに共感し合いました。

やがて再開した鬼ごっこ。
もう誰も仲間外れになったり、冷やかされたりはしません。

「あー、楽しかった!」
「またみんなで遊ぼうぜ!」

笑顔で帰るこどもたちの姿。そんな彼らが抱く中たくさんの生きづらさに胸が痛むと同時に、彼らが持っているたくさんの優しさに温かな気持ちになった、そんな公園遊びの一場面でした。