現在世田谷美術館にて行われている「ブルーノ・ムナーリ展〜役に立たない機械をつくった男〜」という展示に行ってきました😊
以前葉山で行われていたのですが、遠方なのと予定が合わなくて行けなかったため、世田谷の展示は絶対に行こうと思っていました✨
小さな頃「こどもの城(国立総合児童センター)」連れて行ってもらいましたが、その頃にはまだムナーリについて知る由もなく「様々な音を組み合わせる機械で遊んだなぁ」という朧げな記憶が残っているくらいです(小さな頃から「音」に対するこだわりは強かったようです)。
1998年に満90歳でムナーリが亡くなるまでの約10年間、ムナーリと同じ時代に生きていただけに、もっと深く知っていればと悔やむばかり。
でも、この歳になってから出会えたことで、改めてその素晴らしさや自分の実践に生かせる部分を吸収することができました✨
例えば「役に立たない機械」。
細い棒状の木材、あるいは表と裏とで色彩が異なる板がバランスよく吊られてモビールのような作品は、ささやかな風にもそよいでクルクルと回転し、その度に色の見え方や壁や床に映る影の形が変わります。
また、紙を2つに折って切れ込みをいれて立たせた「旅行のための彫刻」という作品は、重くて動かないイメージがある「彫刻」という固定観念を打破し、持ち運べるという特性を生かして旅行の先々の風景とともに作品になります✨
私がハマっており、こどもたちとの実践を重ねているおもちゃ…透明なシートに絵が描いてあり、組み替えることで物語を創る、ボードを差し替えるだけで道が変わる迷路など…も、元を辿ればムナーリのデザインがあったことがわかり、自由に遊べるスペースでは大人1人、夢中になって遊んでしまいました笑
今回の展示の中で印象に残った言葉があります。
それは、「空想のオブジェの理論的再構成」。ムナーリの作品の題にもなっています。
「…本来であれば違ったカテゴリーや文脈にある図像などを1枚の紙の上に組み合わせて作品を制作する技法を、コラージュといいます。…ムナーリは、コラージュの考え方をさらに発展させて、新たな作品を生みだしてもいます。発想の元となっているのは、恐竜の骨や土器の欠片など全体のなかのほんの一部分でしかないものから全体像を推定する、考古学の復元という手法です。紙片を台紙の上にいくつか並べ、線を引き、描く形を導いていきます。ムナーリはこれを〈空想のオブジェの理論的再構成〉と名付けました。」
『ブルーノ・ムナーリ』(発行者:足立欣也、発行所:株式会社求龍堂、2018年)
と、図録には書かれています。
実物をぜひご覧いただけたらと思うのですが、ムナーリはチラシや楽譜の切れ端を紙に散りばめ、それらを線や色で紡いでいきました。
それは単に「破られたチラシや楽譜を元に戻す」という単純な「復元」ではなく、頭の中で描かれた「空想のオブジェ」に基づいてピースを復元していく、いわば紙片の欠片に新たな生命を宿す営みとも言えるかも知れません。
離れているもの、バラバラになったものを「空想」を描いて関連性をイメージし、〝美〟でもって紡ぎ合わせる…。
光と影、有機物と無機物、アナログとデジタルなどのように 対になる異質なもの同士の出会いを大切にするという、レッジョ・エミリアで見た光景、大切にされ続けている視点、感性、教育観が自然と思い起こされました✨
ムナーリは『空想旅行 ブルーノ・ムナーリのデザイン教本』(1992年にムナーリが原本を書き、2018年に株式会社トランスビューより上記タイトルで発刊された)という本の中で、全く同じ配列で並べられた21個の点を、あるページでは細胞分裂のように放射線状に線で結び、またあるページでは点と点の間にある空間を円で埋め、まるで泡のような形を描いてみせ…同じ21個の点と、「線」という要素だけでも何通りものバリエーションが描けることを示しています。
形・線・色…〝美〟を生み出す構造を探究し、普遍的・共通の構造があるからこそ、誰もがそれぞれの「空想」を膨らませて創造することができる…。
没後もなお動き続けるムナーリの作品や思想に魅せられるような、そんな展示でした😊