今回、母の乳がんの手術の付き添いと

統合失調症だと思われる症状についての診断をしてもらう事を目的に実家へ戻りました。


空港まで迎えに来てくれてた母のテンションの高さに無理を感じながら、

3人で遅い昼ごはんを食べ、夕食の買いものをしていたら

母が「パパがいない」と殺気立って探し始めました。


父は唐揚げの詰め放題に参加しているのを遠目で確認できたので、

こういう時に幻覚を見たりするのかなと、母の様子を見ていると悲しくなりました。

父は昔からみんなで買いものに行った先で勝手に行動し、私たちを困らせていました。


そんなことを考えながら母に「唐揚げの詰め放題にいるよ、ほらあそこ」と教えてあげると、

それまでの般若のような形相が

「黙っていなくなるから、困るのよねぇ」

と言いながら、いつもの母の顔になりました。



入院当日、付き添えないと言っていた父が仕事を休んでくれました。

入院手続きが済んだあと母を病室まで送り、夕方の手術説明まで父と二人で過ごすことになりました。

まさかこんな展開になるとは思わなかったけれど、思いかけず父の言い分を聞くことができました。

父は私が母の病気に気づいているとは知らなかったので、安心していました。


父は繁忙期に仕事を急に休んだので、会社の事務所に行きたいと言いました。

父は母の状態を会社に説明していて、融通を聞いてもらったりしていると聞きました。

私も一緒に行き、事務所にいた社長の奥さんに挨拶をし、

母がかけている迷惑を一緒に謝りました。


父には味方がいるなぁ、なんて感じてしまいました。


私は母が家にいない間に、どうしても家の隣の奥さんに、母の事で誤りに行きたかった。

自己満足でしかないのかも知れないけれど、

父と浮気していていつも車でいちゃついている幻覚を見る母が、

起きがけに問い詰められてキレた父親から手を上げられ

隣へ怒鳴りこんだと聞いていたから。


そのことに私が責任を感じる必要はないと父は言ったけれど、

もともと一人で行くつもりだった気持ちを伝えたら了承してくれました。

インターフォン越しに「なんですか?どういうご用件ですか?」と思い切り警戒されましたが、

「以前、母がご迷惑をかけた件で一言謝りに来たのですが」

と言うと、長い沈黙の後、父と一緒に玄関へ入れてくれました。


家に母がいないことを聞くと少し安心したように話を聞いてくれました。

現状、まだなにも出来てはいないけど出来ることからしていくので、と伝えました。

覚悟はしていましたが、

聞いていたほかにも母から身に覚えのない父とのことで数回、責められていたようでした。

母が乳がんで入院していることは言いませんでしたし、この病気の事は詳しく言えませんでしたが

更年期障害だと思ってるな、と思ったので否定も肯定もしませんでした。


乳がんの担当医に統合失調症の治療について相談に乗ってもらいたかったので、少し早く病院へ戻りました。

入院中に症状がでて暴れたりしない限り、

本人が了承しないと治療を勧めることができないと言われました。


乳がんの手術は問題なく、予定していたより少し大きく切除した他は経過も良好でした。

完全に麻酔が切れるまで、母は私に昼ご飯を食べたかどうかを何回も聞きました。

私は母のベッドの横でずっと、折り紙を折っていました。


手術後は安静に穏やかでいてほしかったけど、私は次の日帰らなければならなかったので

症状のスイッチを入れるつもりで説得を試みました。


父親が自分がうつの可能性があると自覚していて、

母にも可能性があると思うから、ここの外来のときにでも

一緒に専門医に診てもらいたいと言ってると。


とっさに出た嘘だけど、後で父には何とでも説明できると思って。

きっかけなんてなんでもいいから、なんとか治療に進みたかった。


結果、手術間もない母へ暴走スイッチを入れて帰ったものの、

母はその後暴れることもなく、自分で感情を抑えてしまった。

次の日それを知って、複雑な心境だった。

様子を聞きに電話をしてきた父は驚いて

「お前がたった一人の味方だと思っているんだから、無理はしないでな。俺はなんとでもなるさ。」

と言った。


私は自分名義で携帯電話を契約し、母へ渡した。

母にとって初めての携帯電話なので、暇つぶしにと持って行ったDSの脳トレよりも

よっぽど脳トレだと喜んでいた。


通常食に戻った母と一緒にデイルームで昼ごはんを食べた。

私が帰る寂しさからか、テンションが高めだった。

もう一度スイッチを押した方がいいのか、さんざん迷って

結局そのまま帰ってしまった。


帰り際に母は

「私たちの事は気に病まないで、夫婦の事なんだから」

と言った。

私は「気にしないわけないじゃない」と言って、軽く腕を叩いた。