前回からの続きです。
オーケストラ音楽をピアノで弾くという経験。ピアノソロの勉強に、とてもとても有益だと思います。
と、書きました。
さて、何が有益なのでしょうか?
以下、長くて専門的な記事になります。楽譜が読めない方には難しいかもしれません。どうぞご了承ください。
ではメンデルスゾーンによるピアノソロの名曲、ロンド・カプリチョーソ作品14(以下ロンカプ)を見ていきます。
比較として、同じメンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルト第1楽章(以下メンコン)のを取り上げて考えていきたいと思います。譜例として使うのは3種類。色分けしてみました。
ピアノ譜
ソロヴァイオリンとピアノ伴奏に編曲してある楽譜
総譜
指揮者が見る、オーケストラ全ての楽器の楽譜が縦に揃って記載されている楽譜
パート譜
オーケストラを構成するそれぞれの楽器用に書かれている楽譜
有益なこと その1
「連続する和音をどう弾くか」
例えば、ロンカプの一部分↓
この部分の難しさは何かというと、和音を連続して弾くことで音楽が千切りされたような感じになってしまうことです。「音楽の流れ=横の動き」が分断されてしまうのですね。
このような「連続する和音」。
とても似ている部分が、メンコンのピアノ譜にあるのです。
上の細かい音符がソロヴァイリン、下がピアノ用の楽譜です。
うーむ、和音の連続ですね。何も考えずに弾くと、千切りの音楽になってしまう💦
同じ部分を総譜で見てみましょう。
総譜を見たことがない方には、何じゃこりゃー!!という楽譜ですね笑
実はこの部分、メンデルスゾーン自身の手による楽譜=自筆譜をペトルッチ楽譜ライブラリーからダウンロードすることが出来ます。該当する部分はこちら↓
きれいな自筆譜で、おそらく出版社へ提出するための清書だったと思われます。自筆譜をここに載せたのは、私がリサーチおたくだから、です。笑
本題に戻ります。件の部分では、ソロヴァイオリンの伴奏としてオーケストラのなかの弦楽器が演奏しています。
総譜をもう一度見ると、上から順にこのように書かれています。
(総譜が書かれる際の決まりです。)
ソロヴァイオリン
第一ヴァイオリン(オーケストラの奏者)
第二ヴァイオリン(同上)
ヴィオラ(同上)
チェロとコントラバス(同上)
ちなみにソロヴァイオリンの上方は管楽器の楽譜です。オーケストラの管楽器の人達は、この部分はお休みなのです。
総譜を見て分かることは、ずばりこうです。ピアノ譜で和音として扱われている音は、第一、第二、ヴィオラ、チェロ&コントラバスそれぞれ一音ずつ弾く音が合わさって和音として響いているということです。
では、この部分の第一ヴァイオリンのパート譜を見てみます。
赤い矢印で示している部分から該当部分です。
一段譜って、やっぱり譜読みが楽でいいなぁ。。。
パート譜を見るといつも思ってしまう私。
この第1ヴァイオリンの楽譜を見ると、前半はソ#から1オクターブ上のソへ上へ向かう音階を弾き、後半はラに戻ってきて半音階で上へ向かう、という横の動き=音楽の流れがよく見えます。
では第二ヴァイオリンのパート譜は?
前の小節からタイでつながれたレから始まり、ミから1オクターブ上のミまで上向きに動き、あとはソとシ♭の同音の連続です。
後半は同音連続になりますが、前半は第1ヴァイオリンと同じように横の動きがよく見えます。
あ、ちなみにヴィオラはト音記号でもヘ音記号でもなく、ハ音記号なんですよ〜。これはピアノを習っている方には馴染みのない音部記号ですね。五線譜の真ん中の線がピアノの「真ん中のド」になります。
内声を受け持つヴィオラ。上述のヴァイオリンのように上向きの音階ではないものの前半はほぼ上向きに音が動き、後半は同音連続が多いですね。
さて、チェロとコントラバスのパート譜は?
前半はレからソまで下向きに音階を弾き、中間部分で同音連続があり、最後は下向きの半音階を弾いています。やはり、横の動きがよく見えます。
つまり弦楽器の人達が件の部分を弾く際は、到達点(この場合はパート譜に書かれているリハーサル記号のG)に向かって音楽の横の動き=流れを意識して弾いているはずということです。
横に流れていくそれぞれの音が合わさることで、連続する和音になっているのです。
さて、それではもう一度、該当部分のピアノ譜を見てみましょう。
横の動き=音楽の流れが見えてきたかな?オーケストラの音楽をピアノで代用するわけだから、オーケストラが弾くように音楽の横の動き=流れを意識して弾くべきです。
そして、最初に出した、ロンカプの一部分↓
メンコンと同じように、f(フォルテ)に向かって和音が連続しています。これが千切りの音楽にならないように、音楽の横の動き=流れを意識して弾くべきです。
さて、めちゃくちゃ長い記事になってしまいました。
久しぶりにアメリカの大学院で味わった【小論文を書くモード】にハマった私です。ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。
結局何が言いたいのか、といいますと。
コンチェルトの伴奏をする=オーケストラの音楽をピアノ1台で真似をすることで、楽譜の見え方が変わってくる、ということです。そしてそれをピアノソロ曲の演奏に応用できる、ということです。
今回は「連続する和音をどう弾くか」に焦点を当てました。
また、次は違うポイントに注目してみたいと思います。
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