公演回数で言えば、『エリザベート』や四季時代の『ライオンキング』の方が遥かに長いが、それらとは種類の違う、濃密な時間を過ごした公演だった。
今回、結局ほとんどブログを書かなかったのだが、僕の筆不精以外に、もう一つ大きな理由がある。
この『ビリー・エリオット』が好き過ぎて、迂闊な事が書けなかったのだ。
この公演期間中、実は、最近では珍しいくらいの箝口令が敷かれていた。出演者にたくさんの子供達を抱え、プラス近年のSNSの威力ともなれば、厳し目の危機感を持って構えておくのは致し方のないところではあるが、それ以外にも、海外スタッフからも、厳しく指導がされていた。それは、観に来てくれた観客に最大限楽しんで貰えるように、ネタバレを防ぎ、作品の世界観を守るためだ。そこには、幕が開いてからの二時間半に全てを詰め込んだ、という自負が伺える。
普段どの作品でも、僕も開幕頃はネタバレには気をつけるようにしているが、中日も過ぎれば、少しずつ作品の事や舞台上の事を小出しにしていくのだが、今回は全くその気が起きなかった。言葉を選びながらではこの作品に対する熱い思いを表すことは難しく、通り一辺倒な宣伝文句にしかならないような気がして、それならばむしろ書かない方がいいと、筆を取る事さえしなかったのだ。
それもひとえに、海外制作スタッフの、作品に対する愛に感化されての事だと思う。
脚本も、音楽も、演出も、装置も、道具も、何もかもが練り込まれ、それらを創った人々や、日本に運んで来てくれた人々の、愛に溢れた舞台だった。
この、日本というまだあまりミュージカルの浸透していない国に、最高のエンターテインメントを一切の手加減なく渡してくれた海外スタッフと、それを丸ごと受け取った、ホリプロを始めとする日本の制作スタッフに、畏敬の念を表したいと思う。
作品に携わった側の人間が言うのもどうかと思うが、この公演は、まさに奇跡のプロジェクトだったと思う。
この『ビリー・エリオット』に出演出来て、本当に良かったと思う。僕のミュージカル人生の中で、今後もこれを超えるものが現れるとはなかなか思えない、間違いなく最高の作品だった。
千秋楽の夜に、大阪から自宅に帰り、夜中にこれを書いていて、今思うのは、そんな奇跡に立ち会えた喜びと、それをたくさんの人に観て貰えたという喜び。
作品について、ちょっと思うところを書いていこうと思うけども、今夜はそれでお腹一杯。
劇場に足を運んで下さったたくさんの方々。本当にありがとうございました。