役者は、ダメ出しを受けるのは、仕事のうち。
次回もっと良くなるように、その人がおいしくなるようにと、演出家なり先輩なりが注意してくれているのだから、とてもありがたい物なのだが、本人も色々考えてベストだと思う物を披露しているわけで、ダメ出しを受けるとどんな役者も、ドキッとしたり、傷ついたり、ムッとしたりする。
でもそれを糧にして、昨日の自分より上手になっていくわけだ。
一方、“イイ出し”はあんまりされることがない。もちろん、それこそ直前にダメ出しでもあれば、課題をクリアできたかどうかはチェックしてくれるが、役者が考えて芝居をしても、(特にアンサンブルの場合は)見られてもいない事が多々ある。ミュージカルは稽古時間がとにかく短いので、仕方ない部分もあるかもしれない。
「特にダメを出さないところは、うまくいっているので、自信を持ってやって下さいね」とは、どの演出家もよく言う台詞だ。
でもね、“イイ出し”は凄く大事だと思うわけですよ。
ダメなところを叩いて、イイところを伸ばしたら、2倍早く上手になるじゃない。
そのために大事なのは、ミュージカル俳優に共通の、ミュージカル観、価値観なんじゃないかと思う。
ミュージカルはとにかく間口が広くて懐が深いので、その中の最小公倍数を探すなら、それが『理屈』であり『力学』になるんじゃないだろうか。
“センス”や“嗅覚“が良くて、習わなくてもそう言うことが出来ている役者が、実は結構いる。そう言うことを、“センス”や“嗅覚“で終わらせないように、細かく見つけて“イイ出し”をしていって、それを皆の共通認識にする事が、ミュージカル界の地力の向上に繋がるのではないだろうか。