多くのゲームに、HPとMPというパラメータがある。
HP(ヒットポイント)というのは体力の事で、飲み薬でも、或いはパンでも絆創膏でも、比較的容易に回復する。
一方MP(マジックポイントとかメンタルポイントなど)は、精神力の事で、主に魔法を使ったり、精神的ダメージを負ったりする事で減るが、集中力を使ったりした時にも減る。そして、こちらの回復は比較的難しく、一晩ぐっすり眠らないと回復しない事が多い。
芝居のシーンの稽古ではMPが、ダンスシーンの稽古ではHPが消耗するが、振り付けの段においては、MPも消費する。特に今回の振りはあまり体験した事がない程細かいので、ガリガリ減って行く。
朝から晩までダンス稽古のスケジュールだと、夜にはHPもゼロ近くなってみんなヨレヨレだが、MPの方は、1日の中で何度か尽きそうになる瞬間があるーーそして大抵、そういう時はみんな同じタイミングでーー。そういう時は、稽古場に常に用意されている、貴重なMP回復アイテム『コーヒー』で意識をはっきりさせて、その後の稽古に臨むのだ。
コーヒーと言えば甘いカフェオレしか飲まない僕も、この二週間はブラックコーヒーの消費量が増えた。
普段は、余力を残して稽古に臨んでいる事が多いが、今回の様に、稽古場での回復アイテムに頼りつつカツカツの状態で頑張っていると、MPが回復する瞬間を感じる事がある。それは、娘の笑顔を見た時だ。
早く帰れた日に、玄関に飛んでくる満面の笑顔。ちょうど寝かし付け中だった時の、寝ぼけながら出迎えてくれるほとんど目の閉じた笑顔。もっと帰りが遅くなると、すっかり夢の中の、幸せそうに微笑む寝顔。コーヒーよりも確実に、ぐっとMPのメーターが回復するのが自分で分かる。
娘はもうすぐ3歳。「パパの洗濯物と一緒に洗わないで」と言われる日が1日1日近づいてくるかと思うと、今のまま時間が止まってしまえばいいのにと思う。
今朝は珍しく、僕が家を出る時間まで娘が眠っていた。出がけに起こして、もうパパお仕事行くからね、と伝えると、汗だくでーー布団はかぶらずお腹を出してーー寝ていたにも関わらず、「パパとぎゅってしたい」と言われた。
電車は一本遅れたけど、今日の稽古はMP120%でスタートです。