『シカゴ』 | よこけんの右往左往

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「よこけん」こと、 ミュージカル俳優、横沢健司のひびを綴った日記です。

観劇しにいっても、同業者である手前、こういう所に批判は書いたことがない。

俳優もスタッフも(それに制作も)、今後一緒に仕事をする仲間になるかもしれないからだ。

余計なトラブルの種は敬遠するに限る。

しかし最近、結局は本人の好き嫌いで、いくらでも違う意見はあるのだから、あまり気にせず好きなこと言ってもいいのではないかと思いはじめた。

1万なんぼも払ってるのだから、その権利はあるに違いない。

そんな訳で、ほとんど初めて、素直に感じたことを書く。



『シカゴ』を観てきた。

映画版を観たことがあるだけで舞台は初めてだったのだが、あ、『シカゴ』ってミュージカルじゃないんだ

出演者は全員舞台奥で常に待機しており、衣装替えもなくナンバーとナンバーの間が前場で行われる、芝居と言うより台詞のやり取りで繋がれている。

レビュー、と言うよりコンサートに近い形式で、元々そうなのかは分からないけど、これはこれで面白い形式だなと思った。

開演前から、舞台左右に設置された字幕用の電光掲示板、それに4割程度の客入りに嫌な予感がしていたのだが、ヴェルマ役の女優さんが英語と日本語ちゃんぽんなのも、コンサートスタイルなら許せる気がした。

でも、それならいっそ芝居も全部英語にしてあげれば良かったのにと思わずにはいられない。

スタイルもいいし、歌も踊りも抜群、日本人にはとうてい真似できないと思わせる程の技量と才能の持ち主だが、台詞がカタコトでは観るに耐えない…

近所に座ってた人が、彼女がカタコトで喋る度に声をあげて笑っていた。

まあ、それも仕方ないよなあ…。

高いお金払わせてるのに、さらにその上観る方に努力を強要するのは、エンターテインメントとしてどうかと思う。

演出が外国の人で、カタコトが気にならないんじゃないかと勝手に想像してるのだけれど。


踊りは最高

フォッシースタイルを完璧に再現し、独特でお洒落で格好いい、日本で観られる最高級のダンスなのは間違いない

反対に演技が最低。

これは半分くらい演出のせいではないかと思うが、外国人の演出家は日本語が分からないので、芝居にテンポを求めたがる。

結果、感情を見せるより、どれだけ早く台詞を言い終われるかで完成度を計りがちになる。

…とか同業者としてフォローしてから言うけども、芝居のシーンがほとんど全部成立してないので、次のナンバーまでが物凄く長く感じた。

毎回、毎回、本当に

自分が今、「芝居をちゃんとやりたい」と思ってる時期だから余計なのかもしれないけど、それぞれのキャラクターが何を思っていて、お互いに相手をどう思っていて、みたいな人間関係の基本的なことが、1コも見えてこない。

意図してそう演出しているとしたら大成功だが、魅力的なダンスナンバーを芝居で繋ぐスタイルなら尚更、登場人物の内面をちゃんと見せて欲しかったなー。

そう、今回ヨコザワが憤っている一番の原因がそれで、「芝居」とはとても言えず、台詞をただ読んでるだけ。

いくらミュージカル(コンサート?)だからって、これじゃ観てる人が怒るよ


映画が公開された頃、リアルの世界と想像上のステージの世界を頻繁に行ったり来たりすることから、戸惑いを感じるとの感想を良く聞いたものだが、舞台版を観て、映画がとても上手に作られていることが分かった。

コンサート形式を上手にドラマ化して、尚且つ元々のスタイルも失っていない。

お洒落で大人の映画だったのだと、もう一度見直して気付いた。

そう、夜公演観た後、家に帰って映画見直しちゃったからね(笑)

皆さん、映画版『シカゴ』は、ほんとオススメですよ