●太平洋戦争の戦跡訪問記 (第16次沖縄本島 5日目…Part2)
2019/1/5(土)…Part2
佐喜眞美術館を退館してから西原町の沖縄埋蔵文化財センターへ向かう。
その目的は戦跡関連の情報収集である。
雨で路面が濡れているから後輪がスリップして非常に怖い。
軽トラックは後輪駆動ですが荷台は空荷状態ではタイヤと路面との密着度が不足して低速ギア時はとにかくスリップして埒が明かない。
特に登坂時はその傾向が強くてハンドルを右に取られて対向車線に飛び出してしまった時はマジで焦った。 (汗)
仮に対向車線を下って来る車が有れば正面衝突だった。
先日もあわや隣の車線の車の横っ腹に衝突しかかったし雨の日の沖縄での運転は危険がいっぱいだ。
文化財センターの係員と話して戦跡の情報を収集しておく。
ここから最も近い戦跡は棚原の陣地壕だが運が悪い事に降雨が激しくなって車から一歩も出られない。
付近では駐車できる場所が見付からないのにもマイッタ!
天候の回復は望めそうにないので棚原の陣地壕はオミットとする。
雨雲から逃げる様に糸満方面に向かって南下して行くと豊見城付近から雨が止んで曇天になりました。
豊見城市保栄茂集落の東側の丘陵(標高105m)の頂上直下には日本軍の監視哨が有るそうなので探しに行きます。
ところで保栄茂と書いて何と読むと思いますか?
正解は "ビン" と読むのです。
しかし、どう考えてもとてもこうは読めませんよね!
当て字であっても納得できない程に難しい呼称だな。
保栄茂集落に入って住宅地内で見掛けた御仁に "保栄茂集落の丘陵(標高105m)に旧日本軍の監視哨が遺されているそうですがご存知ないでしょうか?" と尋ねてみました。
"標高105mの丘陵には保栄茂グスク跡があり拝所も有りますがどうしても登りたいならば区長さんの許可が必要です!" との旨。
それは面倒くさそうな話だが "郷に入れば郷に従え!" は旅の鉄則。
地元民から顰蹙を買う様な行動はいけません。
件の御仁が保栄茂集落の区長さんに連絡して入山の了承は頂けた。
親切な御仁にお礼を述べて丘陵に向かって車を走らせる。
高度を上げるに従い道幅が狭くなって車の通行が困難となったので車から降りて徒歩でのアプローチとした。
車道を上り切った所には "保栄茂グスク " に繋がる階段が有る。
手摺りが付いた階段ですから上るのは楽チンでした。
上り切った所が保栄茂グスク跡でございます。
標高105mの頂上からの眺めは頗るよろしい。
こちらは南部方面の眺めです。
麓にはビニールハウス群が建ち並び遠くに見える丘に建つのは米軍or自衛隊のレーダー塔かな?
北西方向の眺めがこれです。
分厚い雲が垂れ込めて視界はイマイチだが条件さえ良ければ瀬長島、那覇空港などが見える筈でしょう。
さすがに監視哨が置かれた場所とあって眺望は申し分ない。
糸満市街地(南西方面)の眺めです。
市街地の中に架かる大きな橋が見えますね。
眺望を楽しむのは良いが肝心の戦跡を探さねばなりません。
監視哨はいったい何処に有るのかな?
保栄茂グスクを探索していると何やら人の気配がする。
それもこちらに向かって近付いて来る様です。
"こんな所に誰が登って来るのでしょうか?" と訝しく思っていたらの御仁は保栄茂集落の区長さんでした。
"貴方ですか?静岡から来たと言う人は?" と問い掛けられて "ハイ、その通りです!" と答える。
"保栄茂地区の監視哨を見る目的は何ですか? " との問いに "私の趣味と言うか道楽みたいなものですよ!" と答える。
この回答が余程お気に入りだったせいか区長さんの顔が緩む。
"ご希望の監視哨はこの階段を下った広場から保栄茂グスクの岩場に沿ってヤブを漕いで進めば着きます。距離的にはそんなに遠くないですがハブには気を付けて下さい!" と仰った。
これで監視哨の場所についてはまずは問題なかろう。
区長さんのお墨付きを頂いたからだ。 (笑)
後は私の頑張り次第ですな。
岩場をトラバースする様にヤブの中を前進あるのみ。
5分も進めば横長に切れ目が有る大きな岩に着いた。
その切れ目を観察してみると明らかに人為的なものと思えた。
取り敢えずは切れ目を撮影しておきます。
切れ目が有る件の岩をバックに自分撮りです。
足元は雑草とか樹木の蔓&枝が絡まって非常に不安定で立っている事も困難ですから三脚はとても使えません。
横長の切れ目に近寄って接写してみました。
内枠部分は平面的な仕上げとなっており明らかに人工的です。
これは間違いなく監視哨の "監視窓" であると確信した。
その長さは1m、高さは10㎝程か!
監視窓が明らかになったからには当然ながら監視哨への出入口を見出して中に入りたいと思うのは当たり前です。それでは出入口を探しましょう。
監視窓から往路を7m程引き返すと左下方に何やら壕口を発見!
直感的に "出入口はここだ!" と思った。
ザックを降ろして空身で進入を試みる。
内部は暗そうだから頭にはヘッデンを装着。
四つん這いになって後退りする姿勢で何とか内部に入りました。
(監視哨の出入口)
当たり前だが監視哨の内部は真っ暗。
岩を刳り貫いて造られたと思われる大きな空間が広がる。
内部の写真をアップしますが監視窓の部分が分かり難いです。
監視窓からは蔓が2本垂れ下がっているのが見えます。
しかし、監視窓が設置された場所はかなり高い。
恐らくこの壁に梯子を凭せ掛けて監視窓から外を覗いていたのだろう。
内部の観察を終えて外に出ましょう。
監視哨の中から出入り口(壕口)を撮影してみました。
土砂が流入してかなり壕口が狭まっていますね。
故に空身でなければ入れなかったのだ。
(監視哨の内部 ②)
来た道をヤブを漕いで保栄茂グスク下の広場に戻った。
非常にレアな戦跡を見出せた事に大満足の気持ちでいっぱいです。
思い起こせば保栄茂集落の親切な方々のご協力が力となった事には感謝の言葉しか有りません。
車に戻って丘陵から集落に向かって下って行きます。
(Part3に続く)